2018 Fiscal Year Research-status Report
牛卵巣内での第1卵胞波主席卵胞と黄体の位置関係が子宮機能および胚発育に与える影響
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17K15384
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
三浦 亮太朗 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (60782133)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 牛 / 子宮内膜 / 卵巣 / 第1卵胞波主席卵胞 / 黄体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「発情後に発育する第1卵胞波主席卵胞と黄体が同一卵巣内に共存した場合に受胎性が低下する」という現象について発情周期中の第1卵胞波主席卵胞および黄体の発育動態、また卵巣内での位置関係が、人工授精後の子宮機能および胚の発育に対して影響を与えるかを検証し、共存牛での受胎性低下をもたらすメカニズムを解明することを目的としたものである。上記に述べたメカニズムを解明することで、生産現場における牛の受胎性の向上につながる応用研究および技術開発をもたらすと考えている。今年度までに、無処置の共存牛と非共存牛の卵巣内構造物所見(第1卵胞波主席卵胞および黄体の直径)、血液サンプルおよび子宮内膜サンプルを解析できる十分な数を確保している。また、発情後5日目にヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を筋肉内投与し第1卵胞波主席卵胞を人為的に消失させた場合での共存牛と非共存牛の卵巣内構造物所見、血液サンプルおよび子宮内膜サンプルを採材している。子宮内膜サンプルは左右の子宮角における内膜を採材しており、子宮局所における子宮内機能に差異があるのか調査中である。血液サンプルからは血中プロジェステロン(P4)濃度の測定を行い、子宮内膜サンプルからはmRNAを抽出し、P4およびエストラジオール(E2)の受容体の発現量に関して定量を行った。一部のサンプルに関しては解析が完了しており、これらのデータをまとめ第2回日本胚移植技術研究会にて口頭発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成31年度に発情後5日目に卵巣所見を観察し、共存牛と非共存牛を確認した後、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを投与し第1卵胞波主席卵胞を人為的に排卵させることが、無処置の群に比較して子宮内膜機能にどのような影響を与えるのかを評価する研究を検討していたが、発情後5日目のhCG投与試験を平成30年度に前倒しし実施した。現在までの研究の進行状況では、試験計画に記載している、無処置での共存と非共存の卵巣所見、血液サンプルおよび子宮内膜サンプルは充分数確保が完了し、一部のサンプルに関して解析結果を出している。また、hCG投与での共存と非共存の卵巣所見、血液サンプルおよび子宮内膜サンプルは現在サンプル数を増加させているところである。こちらの試験に関しても、一部のサンプルに関しては、卵巣内構造物(黄体および第1卵胞波主席卵胞)の発育動態、血中P4濃度および子宮内膜におけるP4受容体(PGR、PGRMC1)、E2受容体(ESR1)およびプロスタグランジンF2a合成酵素(PGFS)のmRNA発現量をリアルタイムPCRにより定量し、解析を行った。また、解析が完了したデータに関しては、データをまとめ学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、無処置の共存牛と非共存牛の全子宮内膜サンプルの解析を行う予定である。ステロイド受容体のmRNA発現量の比較を行うだけではなく、胚の発育に関与するとされる糖代謝および脂質代謝に関連する因子のmRNA発現量の定量をリアルタイムPCRを用いて行い、共存牛と非共存牛間で胚発育に差異が生じる可能性があるのかを検討する。また発情後5日目にhCGを筋肉内投与した場合での共存牛と非共存牛の卵巣内構造物の発育動態、血液サンプルおよび子宮内膜サンプルの数を増やし、第1卵胞波主席卵胞を人為的に消失させた場合での子宮内膜機能に変化が生じるのかを解析する予定である。また、発情時に人工授精を行い発情後の5日目に卵巣の観察を行い、共存牛か非共存牛かを確認した後、発情周期の14日目にバルーンカテーテルを用いて子宮内を還流する。この手法により、胚が存在するのか、胚が存在する場合その胚の形態を評価し、さらには胚の機能を評価するために脂質代謝に関わる遺伝子発現を評価し、共存牛と非共存牛で胚の発育および性質に差異が生じているのかを評価する予定である。さらに、14日目の子宮内膜サンプルを採材し、胚が存在する状態での子宮内膜機能を共存牛と非共存牛で比較することを考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は、国際学会に参加する予定でありそのための旅費を計上していたが、参加を取りやめたため、その金額の一部が次年度使用額として生じた経緯となります。今年度の研究において採材は順調に進んでいたのだが、遺伝子発現解析が遅れを取ってしまい、解析に関わる消耗品を次年度に購入するために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)