2018 Fiscal Year Research-status Report
グリア細胞に発現するトランスグルタミナーゼの神経変性疾患発症への寄与解明
Project/Area Number |
17K15390
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50453139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / ミクログリア / アストロサイト / アミロイドβ / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系には神経細胞以外にオリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリアと呼ばれる3種類のグリア細胞が存在しており、脳機能の維持に重要な役割を果たす一方、異常な活性化は脳疾患の原因ともなり得る。 トランスグルタミナーゼ(TGs)は蛋白質の架橋結合を形成する酵素であり、ヒトではTG1~7と血液凝固第13因子の8種類が知られている。中でも組織型TG(TG2)は生体内に広く存在し、種々のストレス状況下において発現誘導されることや炎症反応に関与することが報告されている。近年、アルツハイマー病などの神経変性疾患においてTG2の関与が示唆されており、中枢神経系におけるTGsの役割が注目されてきている。8種類のTGsのうち、脳ではTG2を含む4種類の発現が報告されているが、神経細胞やグリア細胞の各細胞における個々のTGsの役割はあまり知られていない。本研究では、グリア細胞に発現するTGsの脳機能への寄与について検討した。 これまでに培養アストロサイトおよびミクログリアを用いた実験において、細胞を活性化した際の一酸化窒素産生にTG2が関与すること、活性化ミクログリアの貪食能にもTG2が関与することを報告している。アルツハイマー病に特徴的な病変である老人斑の主たる構成蛋白質はアミロイドβ(Aβ)であり、Aβ凝集体が神経細胞死に関与すると考えられている。しかしながら、Aβが直接神経毒性を示す濃度に比べ、アルツハイマー病の脳内Aβ濃度は低いことが報告されている。神経細胞とグリア細胞との混合培養系にAβを添加して免疫染色を行ったところ、Aβは主にミクログリアに取り込まれミクログリアを活性化すること、このミクログリアによるAβの取り込みにはTG2が関与することが示唆された。したがって、TG2を介したグリア細胞のAβ取り込みと活性化がアルツハイマー病の病態悪化に関与する可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、研究代表者と所属研究室の学生を実験実施者として進めているが、当初想定していたよりも実験を実施する人員が少なく、各実験の同時平行が困難であった。また、2018年度には、研究代表者自身が本研究で得られた成果を発表するため、海外を含めた学会出張を複数回行っており、自身の実験実施の進捗にも遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に記載のアルツハイマー病のモデル動物を用いた実験を行うにあたり、所属機関内の別の研究室において、アルツハイマー病モデル動物を用いた実験を過去に行った経験のある研究者がいるため、実験協力を依頼し、動物実験を推進する。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況において、人員不足等により実験の実施が少なく遅れが生じたことから、2018年度の物品費使用額が減少した。次年度に改めて物品費として使用する。
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