2019 Fiscal Year Research-status Report
グリア細胞に発現するトランスグルタミナーゼの神経変性疾患発症への寄与解明
Project/Area Number |
17K15390
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50453139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / ミクログリア / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の架橋結合形成酵素であるトランスグルタミナーゼ(TGs)は、血液凝固や皮膚の角質化など、生体を維持するのに不可欠な機能を有している。また、神経変性疾患の患者死後脳や炎症疾患において、TGsの1つであるTG2の発現上昇が報告されており、神経変性疾患でのTG2の関与が示唆されていた。一方で、グリア細胞が神経変性疾患を含む脳疾患や脳の機能維持に重要な働きをしていることも明らかになりつつある。申請者はこれまでにグリア細胞を活性化した際の炎症応答を測定し、種々の化学物質によって応答に変化が起こることを報告してきた。これらの研究を行う中で、グリア細胞の炎症反応にもTG2が関与する可能性を考え、培養アストロサイトを用いた実験において、細胞活性化剤であるリポポリサッカライド(LPS)によりTG2発現が誘導されること、TG2発現と一酸化窒素(NO)産生が関連している可能性を見出している。また、ミクログリアの細胞株であるBV-2細胞を用いた実験においても、LPSによるTG2発現の増加とNO産生への関与を見出しており、BV-2細胞ではさらに貪食能についてもLPS刺激で増加したTG2やTG酵素活性が関与することを報告している。ミクログリアの貪食能は、通常、活性化と鎮静化が巧妙に調節されているが、その詳細なメカニズムは明らかになっておらず、活性化と鎮静化のバランスが崩壊すると、周辺の神経細胞に対する破壊作用が優勢となり、死細胞だけでなく、生きている神経細胞さえも貪食により除去してしまう可能性が報告されている。活性化したミクログリアにおける貪食能にTG2が関与することは、TGsの活性制御により、ミクログリアの異常活性化を介した神経細胞死を制御できる可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
産前産後の休暇および育児休業の取得により研究を中断する必要があったため。また、休暇に入る前にも体調により予定通りの実験研究が実施できないことがあったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究支援員の利用申請など、研究の補助を行ってもらう人員を確保し、実験の実施を推進する。また、本研究課題は申請者および所属する研究室の学生とで実施する計画であるため、複数の学生に同時並行で実験を実施してもらうことによって研究を推進する。 当初の計画では細胞を用いた実験の後に疾患モデル動物を用いた実験を行う予定であったが、産前産後の休暇および育児休業の取得により細胞培養および動物の飼育が出来なかったため、2020年度はより短期間で実験が進む細胞を用いた実験に注力する。
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Causes of Carryover |
産前産後の休暇および育児休業の取得により研究が実施できない期間があり助成金の使用が少なかったため。次年度に試薬等の物品購入に使用する。
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