2017 Fiscal Year Research-status Report
Field-scale soil phosphate fertility and available water capacity assessed using land surface feedback dynamic patterns
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17K15400
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
木下 林太郎 帯広畜産大学, 畜産学部, 特任助教 (70793678)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン肥沃度 / リモートセンシング / 衛星画像 / リン酸吸収係数 / 保水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、簡易で高速に実施可能な土壌のリン固定力の評価方法の確立を目指している。リンは植物の多量必須元素であるが、過剰な施肥による作物の収量や品質の低下が報告されており、施肥の適正化が喫緊の課題である。本研究のモデル地域である北海道十勝地域は、大規模圃場化が進んでおり、圃場内の土壌のリン固定力のばらつきも増加しており、衛星画像等を利用した圃場のリン固定力のマッピングが必要となっている。平成29年度は、十勝地域幕別町の2圃場内において50m間隔で土壌サンプリングを行い、土壌のリン酸吸収係数、粘土鉱物組成および理化学性の評価を行った。この結果から、いずれの圃場においても、圃場内のリン酸吸収係数はAl-腐植複合体や非・準晶質の粘土鉱物(アロフェン、イモゴライト)に規定される事が明らかとなった。また土壌断面調査から、表層土壌のリン酸吸収係数のばらつきは、火山灰由来の粘土鉱物やAl-腐植複合体を多く含む土層の層厚が流亡や再堆積によりばらつくことに加え、反転耕起や心土破砕により下層の非火山灰土壌の混入が生じることに由来することも明らかとなった。また、リン酸吸収係数と風乾土水分含量の間には高い正の相関関係が見られた(r=0.94)。この結果から、リン酸吸収係数を乾燥時の土壌の水分含量を評価することで推定する方法が現実的である事が明らかとなった。予備解析として、Landsat-8衛星画像の短波赤外線波長を利用して、各圃場のリン酸吸収係数の推定を試みた。降雨から10日以上経過し、土壌が乾燥状態時の衛星画像を利用した。この結果、1圃場では比較的高い精度で推定が可能である一方、他の圃場では精度が低かった。空間統計により、推定精度が低かった圃場では至近距離で土壌のばらつきが大きく、さらに高密度な土壌サンプリングが必要である事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、圃場内のリン肥沃度を規定する土壌因子を特定すること、リン酸吸収係数と土壌の保水性に相関関係がある事を実証すること、人工衛星データを利用して圃場規模でリン酸吸収係数の推定が可能であるか評価することを目指した。計画通り、自然農法を行う1圃場と、慣行農法を行う1圃場を対象に表層土壌のサンプリングを行い、採取したサンプルの分析を行った。このデータから、圃場内のリン酸吸収係数はAl-腐植複合体や非・準晶質の粘土鉱物に規定され、Hashimoto et al. (2012)が全国1300地点で採取したサンプルから得られた結果と類似している事が明らかとなった。また、採取されたサンプルにおいて、リン酸吸収と土壌の保水性の指標である風乾土水分含量の間に非常に高い正の相関関係があり、火山灰土壌において保水性を利用してリン酸吸収係数を推定する事が可能なことが示された。実施計画通り、Landsat-8人工衛星データを利用して、土壌サンプリングを行った2圃場でリン酸吸収係数が推定可能か評価を行った。この結果、推定モデルの精度はモデル校正に利用される土壌サンプルの水平方向の採取間隔が重要である事が明らかとなった。推定モデルの精度が低かった圃場は、水平方向のリン酸吸収係数のばらつきが大きく、50m間隔の土壌サンプルではそのばらつきを評価出来なかったと考えられた。本研究では解像度の高いWorldView3人工衛星の利用も計画していたが、適正な時期のデータの取得が困難であったために、解像度の高い他の人工衛星データの利用を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度に得られたリン酸吸収係数の圃場内でのばらつきの存在に関するデータや、リン酸吸収係数を規定する土壌成分の解明に関するデータをまとめ国外の学会や科学雑誌の誌面で発表する予定である。H30年度は、1)リン酸吸収係数のばらつきに合わせたサンプリング法の適応による推定モデル構築、2)推定モデルの広域での利用のための研究、3)人工衛星データやドローンを用いた土壌水分含量の変化の評価を中心に研究を進める。前年度のサンプリングおよびデータ解析から、水平方向の土壌特性のばらつきに合わせたサンプリング間隔の設定が重要なことが明らかとなった。本年度は、さらに高密度な土壌サンプリングを用いて、人工衛星データを用いたリン酸吸収係数推定モデルの構築を行う。また、本研究は2圃場でのみ行われた。本研究の知見が、他の土壌タイプや地域でも適応可能か評価するために、既に取得済みの北海道十勝地域・上川地域で採取された170サンプルの土壌データを解析し、リン酸吸収係数と土壌の保水性の間の相関関係が存在するか解析する。これまで、リン酸吸収係数の推定を主な目的に研究を行ってきた。しかし、同地域では排水不良の圃場が多く存在し、適正な排水改良の施工も作物生産において大変重要である。特に、圃場内での水分の移動方向の把握は適切な暗渠排水、明渠排水および心土破砕の施工方向を決定する時に重要である。また、WorldView3の代替としてPlanetScope人工衛星のデータの利用を検討している。この人工衛星データは、毎日データが取得可能であり、時系列の人工衛星データの解析を可能とする。これらのデータの解析により、降雨から時系列で土壌表面の水分含量を評価することにより、水分含量の増加が地下水面の上昇によるものなのか、透水性不良の土層の存在によるものなのかを評価する予定である。
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Causes of Carryover |
繰り越された助成金は、H30年度分として請求した助成金の物品費と合わせて利用する。物品費は土壌の理化学性分析に利用する消耗品や、土壌水分センサーの購入費に利用する。旅費は、十勝地域内でのフィールド調査や2019年1月に米国サンディエゴで行われる学会発表への渡航費の一部として利用する予定である。人件費は、フィールド調査での作業の補助および、土壌分析の補助に係る経費として支出する予定である。
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