2018 Fiscal Year Research-status Report
陸域からサンゴ礁へ流入する微生物群の実態解明 -サンゴへの感染性と有害性の検証-
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17K15402
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊藤 通浩 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80711473)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サンゴ / サンゴ礁 / サンゴ共在微生物 / サンゴ病原微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンゴ礁は世界的に衰退の一途を辿っている。近年, 人畜の糞便に含まれる細菌や土壌真菌と同一種とみなされる微生物がサンゴの病原菌であることが示され, 陸域を起源とする微生物群のサンゴへの悪影響が懸念されるようになった。一方で, サンゴ礁に実際に流入する陸域起源微生物群のサンゴへの感染性および病原性は検証されていない。サンゴに病原性を示す分類群のサンゴ礁域における分布については, サンゴの病変部からの検出例を除いては殆ど未知の状態である。そこで, 本研究では, 陸域からサンゴ礁域に流入する微生物群を解明するとともに, 陸域およびサンゴ礁域におけるサンゴ病原菌の分布を把握し, それら微生物群のサンゴへの感染性を検証することを目的としている。本年度は, 前年度に引き続き, 調査地域とした沖縄県本部町沿岸海域と, 当該海域に流入する河川および当該海域に処理水が流入する下水処理施設において微生物試料を採取し, それら試料の全DNAである「メタゲノムDNA」を得た。本メタゲノムDNAを鋳型として16S rRNA遺伝子部分配列をPCR増幅し, 一部試料をMiSeqシーケンサーを用いた大量塩基配列解析に供した。解析の結果, 既知のサンゴ病原菌を含む系統群を含む試料を見出すとともに, サンゴ病原菌の拮抗菌との報告がある系統群を含む試料も合わせて見出した。また, それら試料の一部から培養可能な微生物群の分離を試み, 既知のサンゴ病原菌と系統的に非常に近縁な細菌株の分離・培養に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年7月・9月・10月に襲来した大型台風の影響等により, 対象海域での試料の採取が十分に実施できなかった。このため, 陸域および海域の統合解析に必要な高精度微生物叢データがやや不足している。引き続き, 選定フィールドからの試料採取と微生物学的解析を継続する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
選定した陸域および海域のフィールド定点から, 引き続き, 環境試料の採取を実施する。採取した試料中の16S rRNA遺伝子および18S rRNA遺伝子部分配列のデータを統合解析し, サンゴ礁を含む海域とその周辺陸域の連結性を, 検出される微生物群の観点から評価する。既知のサンゴ病原菌の近縁種およびサンゴ病原菌拮抗菌の近縁種の分布と移動については特に着目する。陸域由来の可能性が高い微生物群がサンゴ試料に検出された場合には, 室内実験により、陸域由来の微生物試料のサンゴへの感染性を評価する。
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Causes of Carryover |
平成30年7月・9月・10月に襲来した大型台風の影響等で調査対象海域での試料の採取が十分に実施できず、試料を用いた大量塩基配列解析が予定の一部にとどまったことから、次年度使用額が生じた。平成31年度は試料採取および大量塩基配列解析に重点的に使用する。
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Research Products
(2 results)