2018 Fiscal Year Research-status Report
植物が記憶する情報を利用した熱ストレス耐性向上のための作物栽培法の確立
Project/Area Number |
17K15403
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 伸洋 上智大学, 理工学部, 助教 (50735925)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱ストレス / 記憶 / 長距離シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は前年度に続き,シロイヌナズナが短期的または長期的に記憶・伝達する詳細な情報の分子生物及び植物生理学的解析を継続した.その結果,植物体の一部に熱ストレスを与えた場合,直接ストレスを受けていない部位において活性酸素制御系の遺伝子が60秒以内に上昇することがわかった.また,植物体の一部に45分の熱ストレス処理行った後に通常条件で72時間回復させた場合に,直接ストレスを受けていない部位で発現が上昇する遺伝子も特定した.さらに,植物体の一部への熱ストレス処理により,シロイヌナズナの熱ストレス耐性をより効率的に向上させるための条件検討も行ったところ,熱ストレス処理後に1~3時間回復させるほうが,させない場合よりもより効率的に熱耐性を向上できることがわかった. この他,5分という短時間の熱ストレスを植物体全体に与えた場合も,1~3時間回復させるとより効率的に熱ストレス耐性を向上できることが明らかとなった.次に,5分の熱ストレス処理を植物体全体に行った後の回復中の活性酸素蓄積パターンを調査した.その結果,回復後1時間では茎頂分裂組織付近に活性酸素蓄積が多く見られ,回復後3時間ではその蓄積が葉身で多くなることがわかった.尚,熱ストレス耐性向上のための5分の熱処理及び回復は,トマトでも有効である可能性も示された. さらに,熱センサーと考えられているタンパク質を欠損したシロイヌナズナ突然変異体の長距離シグナルのより詳細な解析も開始し,現在継続中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物体の一部分に60秒の熱ストレスを処理した場合に,直接ストレスを受けていない部位で60秒以内に発現が上昇する遺伝子を明らかにし,前年度の遅れた分を取り戻した.また,効率よくシロイヌナズナの熱ストレス耐性を向上させるための熱処理条件も特定できた.さらに,今後の研究につながる突然変異体及びトマトの解析も開始した.
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Strategy for Future Research Activity |
熱センサーと考えられているタンパク質を欠損したシロイヌナズナ突然変異体を用いた,長距離シグナルの分子生物及び植物生理学的解析を継続する.また,これらの変異体においても植物体の一部分に熱ストレスを与えた場合の獲得熱耐性を調査する.これらの変異体を用いた解析から,熱ストレス情報の記憶・伝達を制御するメカニズムを明らかできると考えられる.さらに,トマト以外の作物を用いた実験も開始し,本研究の最終目標である「効率的な作物の熱ストレス耐性向上」につなげたい.
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