2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜マイクロドメインが制御する植物免疫機構の解明
Project/Area Number |
17K15412
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長野 稔 立命館大学, 生命科学部, 助教 (80598251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物免疫 / 細胞膜 / マイクロドメイン / スフィンゴ脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物免疫における細胞膜マイクロドメインの役割を明らかにすることを目的としている。細胞膜上にはマイクロドメインと呼ばれる脂質・タンパク質集積ドメインが点在しているが、植物免疫との関わりは未解明な部分が多い。本研究では、マイクロドメイン主要構成脂質であるスフィンゴ脂質を改変することにより、マイクロドメイン減少シロイヌナズナを作出し、マイクロドメインと植物免疫の関係を解明しようと試みている。これまでにスフィンゴ脂質が有する2-ヒドロキシ脂肪酸がマイクロドメイン形成のキーとなることを明らかにしており、その合成酵素FAHに着目した研究を行っている。2018年度は、前年度ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて作製したFAHの二重変異体fah1fah2の細胞膜タンパク質のプロテオーム解析を行った。シロイヌナズナ野生型とfah1fah2から細胞膜を抽出し、LC-MSMSを用いて総細胞膜タンパク質を比較した結果、fah1fah2の細胞膜では主要な免疫タンパク質が欠如、または減少していることが明らかになった。この結果は、スフィンゴ脂質が細胞膜局在型免疫タンパク質の局在に重要であることを示唆している。 また、マイクロドメインの増加が植物免疫に与える影響を解析するために、FAH過剰発現シロイヌナズナ形質転換体を作製した。FAH過剰発現体のスフィンゴ脂質を分析した結果、野生型と比較して2-ヒドロキシル化された脂肪酸を有するスフィンゴ脂質量(2-ヒドロキシスフィンゴ脂質)が増加していることを明らかにした。FAH過剰発現体に対してAvrRPT2を有したシュードモナス菌の感染実験を行ったところ、シュードモナス菌耐性が野生型より上昇しており、2-ヒドロキシスフィンゴ脂質が過敏感細胞死を強化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、fah1fah2の細胞膜タンパク質のプロテオーム解析を行うことにより、2-ヒドロキシスフィンゴ脂質によって影響を受ける多数の免疫関連タンパク質を同定することができた。これは、マイクロドメインが制御する免疫システムの解明に繋がると期待できる。また、FAHの過剰発現体を整備し、これを用いて2-ヒドロキシスフィンゴ脂質の増加が免疫の強化に繋がる可能性を見出した。この結果は、将来的にマイクロドメインを利用した耐病性強化作物の作出に繋がる可能性を示唆している。一方、2018年度はシロイヌナズナにおける2-ヒドロキシスフィンゴ脂質の増減がマイクロドメインの形成に与える影響を解析するには至らなかった。そこで、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2-ヒドロキシスフィンゴ脂質がマイクロドメインの形成に与える影響を明らかにするために、fah1fah2二重変異体、及びFAH過剰発現体に対して細胞膜の流動性解析を行う。また、fah1fah2二重変異体、及びFAH過剰発現体の細胞膜脂質の分析を行う。一方で、2018年度に行ったプロテオーム解析により同定した細胞膜局在型免疫タンパク質が本当にfah1fah2で減少しているか、ウエスタンブロッティング解析により調べる。さらに、そのタンパク質が関与する免疫系に与える影響も解析することにより、マイクロドメインと植物免疫の関係を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は細胞膜の流動性解析を行うことができなかったため、未使用額が生じた。次年度はその解析に加えて、高価な抗体を用いたウエスタンブロッティングを行う予定である。
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