2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜マイクロドメインが制御する植物免疫機構の解明
Project/Area Number |
17K15412
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
長野 稔 立命館大学, 生命科学部, 助教 (80598251)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植物免疫 / 細胞膜 / マイクロドメイン / スフィンゴ脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物免疫における細胞膜マイクロドメインの役割を明らかにすることを目的としている。細胞膜上にはマイクロドメインと呼ばれる脂質・タンパク質集積ドメインが点在しているが、植物免疫との関わりは未解明な部分が多い。本研究では、マイクロドメイン主要構成脂質であるスフィンゴ脂質を改変することにより、マイクロドメイン減少シロイヌナズナを作出し、マイクロドメインと植物免疫の関係を解明しようと試みている。これまでにスフィンゴ脂質が有する2-ヒドロキシ脂肪酸がマイクロドメイン形成のキーとなることを明らかにしており、その合成酵素FAHに着目した研究を行っている。昨年度までにゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いてfah1fah2二重変異体を作製し、細胞膜タンパク質の比較プロテオーム解析を行うことにより、受容体やNADPHオキシダーゼなど主要な免疫タンパク質がfah1fah2変異体で減少していることを明らかにしている。2019年度は比較プロテオーム解析の結果を検証するために、特異抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。その結果、免疫受容体やNADPHオキシダーゼがWTよりfah1fah2変異体の細胞膜で減少していることを明らかにした。また、fah1fah2変異体では細胞膜の2-ヒドロキシ脂肪酸を有するスフィンゴ脂質が減少していることや、細胞膜の流動性が上昇していることも明らかにした。fah1fah2変異体の細胞膜上のNADPHオキシダーゼが減少していた結果を受けて、病害応答時のROS産生量を調べた。flg22やキチン処理を行ったところ、fah1fah2変異体のROS産生量がWTと比較して減少していた。この結果から、マイクロドメインはNADPHオキシダーゼを局在させることにより、病害応答時のROS産生に関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、ウエスタンブロット解析から主要な免疫タンパク質がfah1fah2変異体で減少していることを証明できた。また、FAHの欠損が、細胞膜脂質組成に影響を与え、流動性を上昇させることを明らかにした。この結果は、fah1fah2変異体でマイクロドメインが減少していることを示唆している。さらに、fah1fah2変異体で病害応答時のROSの産生量が減少する結果を得たことから、マイクロドメインがROS産生を介して、植物免疫に関与する可能性が示唆された。一方、マイクロドメインの減少がシロイヌナズナの耐病性に与える影響について、解析するには至らなかった。したがって、概ね計画通りと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロドメインがシロイヌナズナ免疫に関与することを明らかにするために、fah1fah2変異体の病害応答時の耐病性遺伝子解析を行う。また、様々な病原体の感染実験を行うことにより、fah1fah2変異体の耐病性を評価する。さらにマイクロドメインを介した免疫システムを解明するために作製したGFP融合タンパク質発現シロイヌナズナ形質転換体を用いて、本研究により同定したマイクロドメイン局在性免疫タンパク質の病害応答時の動態を観察する。
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Causes of Carryover |
今年度はマイクロドメインによるシロイヌナズナ免疫制御機構を明らかにするための、感染実験、及び耐病性遺伝子解析を行うことができなかった。また、マイクロドメイン局在性免疫タンパク質の機能を解析するためのシロイヌナズナ形質転換系統が最近完成した。次年度はこれらの解析を行う予定である。
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