2017 Fiscal Year Research-status Report
中・大型複雑構造ペプチド天然物の大規模構造活性相関による新規生物活性分子創出
Project/Area Number |
17K15421
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 寛晃 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (20758205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機化学 / ペプチド / ライブラリー / 構造活性相関 / 固相合成 / 天然物 / スクリーニング / 生物機能分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗菌ペプチドであるグラミシジンAのone-bead-one-compound (OBOC)ライブラリー構築およびスクリーニング法の確立と、抗がん活性ペプチドであるヤクアミドBの固相全合成法の確立を目指した。またイオンチャネル形成巨大ペプチドであるポリセオナミドBについては細胞内挙動および作用解明を目的として研究を展開した。 グラミシジンAについては、バリン、ロイシン、スレオニン、N-メチルアスパラギンをsplit/pool法により第4, 6, 8, 10, 12, 14残基にランダムに導入した4096種類の類縁体群で構成されるOBOCライブラリーを構築した。続いて、リポソームを用いたイオン透過活性試験と、P388マウス白血病細胞を用いた細胞毒性試験の2種のスクリーニングにより、ライブラリーを評価した。その結果、グラミシジンAと同様の高いイオン透過活性と細胞毒性を示す類縁体のほかに、高いイオン透過活性と減弱した細胞毒性を示す類縁体等、グラミシジンAと特性の異なる類縁体を複数得ることに成功した。 ヤクアミドBについては、官能基変換を施したStaudingerライゲーション試薬を利用することで固相全合成法を確立した。本法を応用し、デヒドロアミノ酸部位立体異性体である計8種類の類縁体の固相全合成を達成した。 ポリセオナミドBに関しては、生物活性として強力な細胞毒性とイオンチャネル活性が報告されているが、哺乳動物細胞に対する詳細な作用は未解明であった。そこで、ポリセオナミドBの細胞内挙動を追跡するため、N末端にBODIPYを導入した蛍光標識体を新たに合成した。ポリセオナミドBおよび蛍光標識体を用いた作用解析の結果、ポリセオナミドBは細胞膜電位変化を引き起こすことに加え、エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれ、リソソーム膜間のpH勾配を解消する複合的な作用を持つことを強く示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
グラミシジンAについてはライブラリー構築から一連のスクリーニングを完了し、天然物と異なる活性特性を示す化合物を複数得ることに成功した。また、これらの化合物について既に構造決定を完了し、スケールアップ合成と精製による純粋な類縁体の調製と、これらのがん細胞に対する成長阻害活性評価、イオン透過活性評価等の詳細な生物活性評価を実施中である。 ヤクアミドBの固相合成については課題であったデヒドロアミノ酸部位の構築を含めた新規固相合成法の確立を完了し、デヒドロアミノ酸部位立体異性体群の合成も達成した。 ポリセオナミドBについては未知であった細胞内挙動と作用解明に取り組み、これまで予想されていた細胞膜電位の変化に加えてリソソーム膜間のpH勾配を解消する複合的な作用を示す可能性を初めて示した。これはポリセオナミドBを基盤としたライブラリーのスクリーニング戦略を構築する上で重要な示唆を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
グラミシジンAについては、ライブラリーのスクリーニングで得られた候補化合物について、共同研究者と連携して抗菌スペクトル測定やがん細胞パネルに対する成長阻害活性評価等を用い、広く活性特性を評価することで、有用なシーズ化合物を得ることを試みる。また、これらの化合物について、三次元構造情報を得ることで、グラミシジンAの示す多様な生物活性に対する寄与を明らかにする。 ヤクアミドBについては既に合成した類縁体群の機能評価を推進する。また、確立した合成法を応用し、新たにα-アミノ酸部位を置換したOBOCライブラリーを構築し、スクリーニングに付す。これにより、重要な生物活性特性を示す新規類縁体を創出することを目指す。 ポリセオナミドBは当年度に明らかになった哺乳動物細胞に対する複合的作用を構造変換により制御することを目指し、新たに類縁体群の合成と評価を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
主として消耗品コストが抑制できたため、物品用の経費が当初よりも低下した。次年度実施予定の合成、スクリーニングおよびその他機能評価により使用予定である。
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[Journal Article] Deuteration and selective labeling of alanine methyl groups of β2-adrenergic receptor expressed in a baculovirus-insect cell expression system2018
Author(s)
Yutaka Kofuku, Tomoki Yokomizo, Shunsuke Imai, Yutaro Shiraishi, Mei Natsume, Hiroaki Itoh, Masayuki Inoue, Kunio Nakata, Shunsuke Igarashi, Hideyuki Yamaguchi, Toshimi Mizukoshi, Ei-ichiro Suzuki, Takumi Ueda, Ichio Shimada
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Journal Title
Journal of Biomolecular NMR
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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