2017 Fiscal Year Research-status Report
ESI増強重水素標識をキーとする脂質代謝異常症SLOSの新規診断マーカー解析
Project/Area Number |
17K15435
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小川 祥二郎 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (30546271)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ESI増強誘導体化 / 質量分析計 / 分析科学 / 先天性コレステロール生合成不全症 / SLOS / ステロイド / 診断マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画に従い,本年度は申請課題が対象とする先天性Smith-Lemli-Opitz症候群 (SLOS) の新規診断マーカーとして期待される24S-ヒドロキシ-7-デヒドロコレステロール (24S-OH-7-DHC) の合成に着手した.その合成経路としては,比較的に安価に入手可能な市販ヒオデオキシコール酸を出発物質とし,SN2反応を利用して母核ステロイドの構築,すなわち3β-ヒドロキシ-5-エンの合成後,側鎖伸長反応に付し,AD mix-αによるSharpless不斉エポキシ化反応を活用して,24S-ヒドロキシ基の導入をした.最後に1,3-Dibromo-5,5-dimethylhydantoinとAIBN存在下でステロイドのC-7位に臭素を導入し,続くTBAB,TBAFで処理することで5,7-ジエンの導入に成功した.最後にステロイド3位と24位の水酸基の脱保護を行う事で24S-OH-7-DHCの合成を達成した. 一方で,コレステロール不全症で高値を示す7-dehydrocholesterol (7-DHC) などのs-cis-ジエン化合物のLC/MS/MS分析に対しては感度向上を目的として種々のCookson型誘導体化試薬が用いられる.先に我々は,高いプロトン親和性 (PA) を有するジメチルアミノフェニル基を導入したDAPTADを合成し,これを用いると,ESIでより高感度な応答が得られることを報告した.しかしながら,測定対象によってはさらなる高感度化が必須である.そこで今回,更なる高感度化を目指し,より高いPAを有するジエチルアミノメチルフェニル基を導入した新規Cookson型試薬4-(4-diethylaminomethyl)-1,2,4-triazoline-3,5-dione(DEMPTAD)の合成にも着手し,これにも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,SLOSの新規バイオマーカー候補化合物の一つである24S-OH-7-DHCの合成に成功した.さらには本研究課題の鍵である高プロトン親和性Cookson型試薬の合成にも着手し始めることができた.いくつかの新規Cookson型誘導体化試薬を合成し,7-DHCと反応させて,LC/ESI-MSによる誘導体化試薬の感度向上能を算出した.その結果と各試薬分子の量子計算から算出されたPAとを比較したところ,両者の間には正の相関があることを見出した.すなわち誘導体化試薬のESI-MSにおける高感度化試薬の効率的なデザインにはPAの導入が有効であることを見出すことができた.この知見はESIで超高感度検出が要求される場合のESI用誘導体化試薬の効率的なデザインに極めて有効に活用できるため,H30年度から本格的に開始するバイオマーカー候補化合物の最適な高感度化試薬の合成をスムーズに行えるものと考えられるため,現在までの進捗状況は順調であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
先に我々が合成を達成した4α-,4β-OH-7-DHCまたはH29年度に合成した24S-OH-7-DHC,H30年度から合成を開始する3β-OH-5,7-dien-24-oic acid 及び3β-OH-5,7-dien-27-oic acidはs-cis-ジエンを有することから,その高選択的・高感度検出にはこれと特異的に反応する1,2,4-triazoline-3,5-dione誘導体 (Cookson型試薬) が高感度化試薬として有用と考えられる.より高感度化のために,先にも述べたPAに基づき,試薬分子のPAを量子計算で算出し高いPAを有したものを選択し,かつ重水素導入可能部位を持つ新規試薬をデザイン・開発する.これにはDEMPTADが有望と考えられ,重水素標識アナ.重水素の導入にはアミノメチル安息香酸ブロミドに重水素標識化されたジエチルアミンを作用させて達成する予定である.DEMPTADに上記の3種ステロール化合物群と2種の胆汁酸群に分けてそれぞれSLOS診断マーカー候補化合物を誘導体化し,これらの高選択的・高感度な検出系を完成させる.その際,モノリスカラムやコアシェル型などの最新のカラムも導入して各代謝物の良好な分離を達成する. また,SLOSモデルラットの調製と生体試料の採取についても並行して計画・準備を進めていく.
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Causes of Carryover |
H29年度に計画していたSLOSの新規バイオマーカーのステロールの合成が当初計画していたよりもスムーズに進行したため使用額に差が生じた.29年度の繰り越し分は本年度に本格的に開始する新規ESI増強Cookson型試薬と,その重水素標識試薬の合成に使用する.近年,重水素化された試薬は原料も価格が高騰しているため,昨年度繰り越し分と本年度分を合わせて,問題なく計画通りの使用ができるものと考えている.
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Research Products
(8 results)