2018 Fiscal Year Research-status Report
ESI増強重水素標識をキーとする脂質代謝異常症SLOSの新規診断マーカー解析
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17K15435
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小川 祥二郎 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (30546271)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ESI増強誘導体化 / LC/ESI-MS/MS / 分析科学 / Smith-Lemli-Opitz症候群 / 誘導体化 / 先天性コレステロール代謝異常症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は当初の計画通りに,SLOSの診断マーカー候補化合物の合成を進めた. 特に,コレステロールは各種ステロイドホルモン及び胆汁酸へと変換される過程で側鎖酸化代謝物を経由することが知られている.この知見を基盤として,7-デヒドロコレステロール (7-DHC) の側鎖26位に水酸基を有する26-ヒドロキシ-7-デヒドロコレステロール (26-OH-7-DHC) を合成の対象とした.本化合物の合成ルートとして,市販の胆汁酸ヒオデオキシコール酸 (HDCA) を出発として,①ステロイド側鎖の伸長:すなわちHDCAから6段階で鍵中間体である3,6-(OH)2-27-COOH体を合成.②ステロイド骨格の変換:次いで,この鍵中間体から6段階で3位水酸基の立体配置をβへと反転と,5,7-ジエンの導入,側鎖カルボキシ基の還元を行い,15工程で目的の26-OH-7-DHCの合成を達成した.さらに昨年度合成した7-DHC類縁体が共通して有する共役ジエンに対する新規ESI増強試薬ジエチルアミノメチルフェニル-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン (DEMPTAD) のLC/ESI-MS/MSにおける性能評価も行った.その結果,7-DHC及びその酸化成績体を原料とした時に,誘導体化前と比較して250倍の感度向上を達し,S/N ≧ 5を与える検出限界は注入量当たり250 fgであり,既存の試薬を凌駕した. これと並行して,SLOSモデルラットの作成を行った.すなわち,7-デヒドロコレステロール還元酵素阻害剤AY9944を妊娠ラットに注射し,産まれた仔ラットに定期的にAY9944を注射することでSLOSモデルラットの作成を行った.その後,速やかに血清,肝臓,脳の採取を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までにSLOSの診断マーカー候補化合物として申請者が予想している,モノヒドロキシ-7-デヒドロコレステロール5種の標品合成 [4α-, 4β-, 24S-,25-及び26-OH-7-DHC] を達成し,これらの化合物と特異的に反応する新規のESI増強誘導体化試薬DEMPTADも準備できた.さらに現在はこれら化合物のLC/ESI-MS/MS分離条件の検討段階まで到達しているため,概ね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
本申請課題の計画最終年である今年度は,これまで得られた5種のステロイド標品と7-デヒドロコレステロール還元酵素阻害剤であるAY9944を投与して作成したSLOSモデルラット血清,肝臓ホモジナイズ,脳ホモジナイズから診断マーカーの特定とその定量法開発を行う.これらはMS/MSにおいては全く同一の挙動を示すためにMS/MSでは弁別ができない,そこで先ずはLC/ESI-MS/MSにおいてこれら5種の診断マーカー候補化合物のLC分離条件を検討した後,各生体試料中におけるこれらの存否を明らかにし,SLOSモデルラットに特異的に検出されるモノヒドロキシ-7-デヒドロコレステロールのみ網羅的に定量を行う予定である.
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Causes of Carryover |
SLOS診断マーカー候補化合物の合成が比較的スムーズに行えたため,当初の計画より消耗品費が少なく済んだため.」
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Research Products
(2 results)