2017 Fiscal Year Research-status Report
PD-1のコアフコシル化阻害による腫瘍免疫の活性化
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17K15451
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 匡央 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (30749479)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PD-1 / Fut8 / 腫瘍免疫 / 糖鎖 / コアフコシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、腫瘍免疫のネガティヴ制御因子であるPD-1が、糖鎖修飾の一つであるコアフコシル化によって、その発現や機能が制御されている、ことに関して解析を行った。CRISPR-Cas9による網羅的なスクリーニングより、コアフコシル化が、PD-1の発現量に関与することが示唆されていた。 実際に、Fut8など、コアフコシル化に必要な遺伝子を欠損することで、PD-1の細胞膜発現量やリガンドとの相互作用が低下することを、明らかとした。また、共同研究により、PD-1の糖鎖修飾を受ける残基、ならびにその糖鎖の構造を解析し、コアフコシル化を始めとする糖鎖のバリエーションについて詳細な情報を得た。また、共同研究により、リガンドとの相互作用に必要な残基を特定した。 CRISPR-Cas9によるノックアウト細胞の解析、またパンフコシル化阻害剤を処置した解析により、初代培養マウスT細胞においても、PD-1は、コアフコシル化によってその発現が制御されていることを見出した。続いて、PD-1の発現が抑制されることにより、T細胞の活性化が誘導されていることを確認することができた。 そこで、当初の目的である腫瘍免疫の活性化に、コアフコシル化の阻害が、応用できるかを検証した。パンフコシル化阻害剤を処置したOVA抗原特異的なCD8 T細胞を、移入することにより、OVA発現がん細胞の退縮が認められ、移入したT細胞が、増殖・活性化し続けていることが示唆された。このことから、コアフコシル化の阻害は、がん免疫療法の治療として応用できる可能性を提唱している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由として下記の3点を挙げる。 2017年度は、我々が以前行っていたPD-1制御因子のスクリーニングから得られた候補遺伝子を、一つずつ詳細に解析することによって、スクリーニングの妥当性を示すとともに、糖鎖修飾の一つであるコアフコシル化によるPD-1の発現量の制御という仮説を提案することができた。 特に、共同研究を2件行い、申請者単独では解明できなかった現象について、明らかにすることができた。 また、コアフコシル化を阻害することで、PD-1の発現量の低下だけではなく、T細胞の活性化が誘導されていることを見出した。特に、モデル抗原特異的なTCR発現T細胞ではあるものの、コアフコシル化を欠損することで、腫瘍免疫への応用を期待させる結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、マウス担癌モデルだけではなく、ヒトの免疫応答においても、コアフコシル化がPD-1の発現制御を介して、免疫系を負に制御しているかどうかを検証する。特に、がん治療への応用を目指して、腫瘍抗原特異的TCR過剰発現やCAR-T細胞、ならびにTILの拡大培養の系においても、コアフコシル化を阻害することで、T細胞の活性を高く保ち続けることができるかどうかを検証する。 がん細胞において、コアフコシル化を始めとする糖鎖の異常が報告されている。免疫細胞においても、糖鎖の異常によって、活性化が制御されていることが示唆されたことから、腫瘍微小環境における、糖鎖の幅広い役割の一端を解明することを新たに目標とする。 一方で、コアフコシル化は、免疫系を正に制御する分子の発現や機能にも関与していることが報告されている。特に、コアフコシル化を欠損するマウスでは、T細胞の活性化が低下するという報告がなされている。申請者は、CRISPR-Cas9や阻害剤により、一度体内で成熟したT細胞のコアフコシル化を欠損させる、また処置期間が短いという違いはあるものの、実際に、長期でコアフコシル化を阻害する処置を行う場合に、がん免疫を正に亢進させるか、それとも、逆に抑制してしまうのか、については詳細に解析する必要がある。
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Causes of Carryover |
本年度は、研究遂行にかかる経費を、まとめ買いすることで、価格を少しだけ下げることができた。また、共同研究先に、解析の一部を委託できたことで、申請者が解析する予定であった費用を、他用途にあてたから。 翌年度は、本年度の余剰分をあわせ、マウス個体やヒト検体での解析を行うべく、必要な試薬を新規に購入する予定である。
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Research Products
(1 results)