2017 Fiscal Year Research-status Report
FGF21の自己免疫および腫瘍免疫に及ぼす影響と治療への応用
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17K15454
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
増田 有紀 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (40421284)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | FGF21 / 自己免疫疾患 / 胸腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
FGF21は、主に肝臓で産生され、糖・脂質代謝を調節すると考えられている。一方で我々は、Fgf21が胸腺上皮細胞(TEC)に特異的に発現し、胸腺内T細胞分化を誘導することを認めた。しかし、Fgf21の胸腺における作用が、末梢T細胞応答にどのような影響を与えるか不明であった。そこで本研究では、T細胞依存的な自己免疫疾患モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルマウスを用いて、FGF21の役割について検討した。 まず、Fgf21の末梢T細胞に対する直接作用を調べるために、Fgf21ノックアウト(KO)および野生型(WT)マウス由来のナイーブCD4陽性T細胞を採取し、in vitroでのTh1、Th2、Th17、Tregへの分化能と、FGF21タンパク添加による影響を検討したが、差はみられなかった。また、健常時におけるFgf21 KOマウスおよびWTマウスの末梢T細胞サブセットの表現型解析を行ったが、ナイーブおよびメモリーT細胞、制御性T細胞の割合に違いはみられなかった。 次に、FGF21の自己免疫への影響を調べるために、Fgf21 KOおよびWTマウスを用いてEAEモデルを作成した。EAE の麻痺症状をスコアで評価した結果、Fgf21KOマウスはWTマウスと比較してEAE の増悪化が観察された。このときFgf21KOマウスの中枢神経組織では、エフェクターT細胞の浸潤が有意に増加した。また、Fgf21KOマウスの胸腺では、成熟T細胞の減少と、TECおよびDCにおけるMHCクラスⅡの発現が低下していた。胸腺では、TECまたは樹状細胞が、MHC分子を介してT細胞と相互作用することで、自己免疫性T細胞が除去される。これらのことから、Fgf21はTECとDCの機能を維持し、自己応答性T細胞の除去、すなわち自己免疫の抑制に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fgf21の末梢T細胞に対する作用について検討した結果、Fgf21は末梢T細胞に直接作用しなかった。また健常時には、Fgf21KOマウスで末梢T細胞数がわずかに減少していたものの、T細胞サブセットの構成に違いは見られなかった。ところが、EAEを誘導すると、Fgf21KOマウスで、胸腺における分化異常が原因と思われる自己免疫症状の増悪化が観察された。以上のように、当初の計画どおりに実験が進み、Fgf21の自己免疫における役割が明らかになりつつあるため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Fgf21が末梢T細胞に直接作用しなかったこと、EAEを誘導したFgf21KOマウス胸腺ではWTと比較して、成熟TECおよび成熟DCの割合が低かったことから、Fgf21はTECまたはDCに直接作用しT細胞分化を促進する可能性が示唆された。そこで、胎児胸腺器官培養法を用いてFGF21がTECとDCに及ぼす作用について検討する。また、骨髄由来樹状細胞にFGF21を添加し、成熟が促進されるか検討する。以上より、Fgf21の作用メカニズムを明らかにする。 免疫による腫瘍の排除には、がん抗原に対するT細胞免疫応答が重要である。自己の正常細胞が悪性化した癌細胞の抗原の多くは自己抗原であるため、中枢および抹消免疫寛容によって排除を免れている。Fgf21は中枢免疫寛容の維持に働くと考えられるため、Fgf21が腫瘍免疫を抑制する可能性についても検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 産前産後休暇および育児休暇により5か月研究が中断したため、物品費の一部が未使用となっている。 (使用計画) 昨年度に引き続き、免疫細胞を単離、あるいは染色するための特異的抗体が必要なため、繰り越した物品費を試薬購入のために使用する予定である。
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