2017 Fiscal Year Research-status Report
Na+, K+-ATPase dysfunction in the pathophysiology of anxiety: Involvement of brain-kidney crosstalk
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17K15458
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
倉内 祐樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (70631638)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳-腎連関 / 不安 / 社会性 / Na+, K+-ATPase / 酸化ストレス / レドックス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、5/6腎臓摘出により慢性腎臓病 (Chronic kidney disease: CKD) モデルマウスを作製し、①オープンフィールド試験、②高架式十字迷路試験、③明暗箱試験、④社会性試験により行動解析を行った。その結果、CKDモデルマウスは不安様症状を呈し、社会性が低下することが明らかとなった。さらに、CKDモデルマウスに認められる不安様症状および社会性低下の原因として、1. 脳内Na+, K+-ATPase活性低下、2. 脳内グリア細胞の活性化、3. 脳内酸化ストレスレベルの亢進などが関与することが示唆された。結果の詳細は下記の通り。 1.CKDモデルマウスの脳内Na+, K+-ATPase活性低下について、Na+, K+-ATPaseはウアバイン (強心配糖体) により活性が阻害されるが、生体内にはNa+, K+-ATPase活性を制御する「内因性ウアバイン様物質」が存在し、レドックスシグナルを破綻させることが報告されている。さらに、ドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質、一酸化窒素などがNa+, K+-ATPase 活性レベルを変化させることが報告されている。CDKモデルマウスでNa+, K+-ATPase活性が低下する機序は現在解析中だが、酸化ストレス応答に伴う変化が関与することを示唆する結果が得られた。 2.CKDモデルマウスの脳内グリア細胞(ミクログリア、アストロサイト)活性化について、Na+, K+-ATPase 活性低下が関与することが示唆された。 3.CKDモデルマウスの脳内では、誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS) および内皮型一酸化窒素合成酵素 (eNOS) 発現量が増加した。さらに、eNOSアンカップリングの亢進やタンパク質グルタチオン化レベルの増大が認められたことから、活性酸素種の産生増大が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画では、Na+, K+-ATPase活性が低下する脳領域を特定することを計画しており、前頭前野領域、視床下部領域、青斑核領域を摘出した解析にも着手したが、脳領域が小さく正確な評価が困難であった。そこで本年度は研究計画を見直し、脳全体を用いた解析を行うことでCKDモデルマウスの脳内でNa+, K+-ATPase活性が低下することを明らかにした。一方、当初の計画通り、CKDモデルマウスの脳内でミクログリアおよびアストロサイトが活性化していることを見出した。さらに、酸化ストレスに着目した解析を行うことで、CKDモデルマウスの脳内でeNOSアンカップリングおよびタンパク質グルタチオン化レベルが亢進していることも明らかにした。Na+, K+-ATPase活性低下は酸化ストレスを誘導することが報告されているが、逆に酸化ストレスシグナルがNa+, K+-ATPase活性を低下させることも報告されている。本年度の解析ではCKDモデルマウスの脳内で認められたNa+, K+-ATPase低下のメカニズムは不明であるが、in vitroで行った予備検討により酸化ストレス関連物質がNa+, K+-ATPase活性を低下させることを見出したため、平成30年度に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、Na+, K+-ATPase活性低下を改善する薬物としてRostafuroxinに着目し、Rostafuroxinが腎機能低下による不安様症状および社会性低下を改善するか検討する。さらに平成29年度の研究成果から、酸化ストレス関連物質がNa+, K+-ATPase活性を低下することを見出したため、CKDモデルマウスの脳内での酸化ストレス関連物質産生レベルの解析を行う。また、当初の研究実施計画に示した通り、Na+, K+-ATPase活性を調節する物質として「内因性ウアバイン様物質」に着目した解析も実施する。特に、ウアバイン、マリノブファゲニン、マリノブフォトキシンの解析を行うが、脳内のみならず全身組織内分布についても解析する予定である。
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Research Products
(22 results)