2017 Fiscal Year Research-status Report
病態形成メカニズムに基づいて展開した感音難聴に対する薬物治療法の確立
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17K15462
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 助教 (30710701)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音響外傷性難聴 / カルパイン阻害剤 / 抗酸化剤 / 一酸化窒素合成酵素阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Tempol(抗酸化剤)とPD150606(カルパイン阻害剤)との組み合わせ、L-NAME(一酸化窒素合成酵素阻害剤)とPD150606との組み合わせと、PD150606単独投与とを比較検討し、組み合わせ投与による音響外傷性難聴に対する内耳保護効果における相加効果の有無について検討した。 聴性脳幹反応解析による聴力測定の結果、TempolとPD150606との組み合わせ、L-NAMEとPD150606との組み合わせ投与は、12および20 kHzの周波数帯において音響曝露(8 kHz octave band noise、110 dB、1時間)による聴覚閾値変動の上昇を有意に抑制し、PD150606単独処置と比較してより聴覚閾値変動の上昇を抑制する傾向が認められた。また音受容細胞である有毛細胞数をPhalloidin染色により解析したところこちらも聴力同様、TempolとPD150606との組み合わせ、L-NAMEとPD150606との組み合わせ投与は、音響曝露後の有毛細胞死を有意に抑制し、PD150606単独処置と比較してより細胞死を抑制する傾向が認められた。したがって、カルパイン阻害剤と抗酸化剤、一酸化窒素合成酵素阻害剤との組み合わせによりより治療効果が高まることが明らかとなった。 また、新たな難聴治療標的分子として、カルパイン過剰活性化に寄与すると考えられるNa+,Ca2+交換体を阻害する薬剤が音響外傷性難聴に対して治療効果があることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、TempolとPD150606との組み合わせ、L-NAMEとPD150606との組み合わせと、PD150606単独投与とを比較検討し、組み合わせ投与による音響外傷性難聴に対してより大きな効果をもたらすことが明らかとなった。また、カルパイン過剰活性化に寄与すると考えられるNa+,Ca2+交換体を阻害する薬剤が音響外傷性難聴に対して治療効果があることも見出した。 以上のことから本研究がおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、光褪色後蛍光回復法を用いて音響曝露後の組み合わせ投与によるギャップ結合機能への影響を解析する。また、新たな難聴治療標的の探索として音響曝露後のNO/cGMP/PKGシグナルに着目し、音響曝露後のcGMPレベルPKG活性について専用キットを用い、定量的に解析する。また、グアニル酸シクラーゼ阻害薬(ODQ)やPKG阻害薬(KT5823)を音響曝露前に処置し、曝露後の聴力変動に対する影響を解析する予定である。さらに、カルパイン阻害薬、Na+,Ca2+交換体阻害剤との組み合わせによる内耳保護効果についても、平衡して解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
動物実験施設改修工事のため一部実験が遅延したため誤差が生じた。
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