2018 Fiscal Year Research-status Report
自然な回復システム「過眠」を新しいうつ病治療法開発に活用する
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17K15463
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
村田 雄介 福岡大学, 薬学部, 助教 (90461508)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 断眠処置 / 過眠 / グルタミン酸受容体 / 経時的変化 / 海馬 / 内側前頭前皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、一過性の睡眠不足後に見られる「過眠」を、生体に備わる心身回復システムとみなし、その回復反応に関わる分子生理学的要因の同定を通じて、精神神経系疾患に対する新規治療薬のプラットフォーム構築を目指すことである。 3年間の研究計画の中間期に当たる当該年度では、睡眠不足の実験モデルである断眠処置ラットに対して、処置終了後から睡眠を取らせる期間を6時間、3日および7日の3パターンで設定し、断眠処置後の過眠発現のタイムコースと海馬および内側前頭前皮質における分子生理学的変化との関係性を評価した。その結果、イオンチャネル型グルタミン酸受容体のサブタイプ(NMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体)を構成する複数のサブユニットに関して、また代謝型グルタミン酸受容体の複数のサブタイプに関して、過眠発現直後に急増または急落を認め、後に正常化するものもあれば、過眠発現後から漸増または漸減するものもあることが明らかとなった。これらの時間依存的な変化は脳領域の違いにより異なるパターンを示した。 当該年度の研究結果から、睡眠不足による神経損傷をその後の断眠が効率的に回復させるメカニズムに関して、グルタミン酸受容体を介した興奮毒性の減弱の重要性が示唆され、またそのシステムは脳領域の違いにより複雑に制御される可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画では、断眠処置後の過眠発現のタイムコースに注目し、ラットの脳内mRNA発現量を精力的に解析することで、回復反応に関わる分子生理学的要因の候補としてグルタミン酸受容体の複数のサブタイプを検出することができた。前年度の研究計画では実験手法の大幅なmodifyが必要となったため進行に遅れが生じたが、当該年度の達成度は予定していた水準に近く、おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を遂行するべく、これまでの研究計画で明らかとなった「過眠」による回復メカニズムの候補因子およびそのリガンドをin vivoで投与し、行動学的・神経組織学的にどのような効果を有するかについて評価する。特にストレス誘発性うつ病モデル動物に対する作用の評価にweightを置くとともに、治療効果の発現メカニズムも明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
当該年度はin vivo実験系の負担の軽減が実現できたこと、またRT-PCR法によるmRNA量の解析実験系が効率化できたことにより、前年度に比べて試薬や消耗品に係る経済的負担を減らすことができた。そのため、当初予定していた使用額よりも実使用額が下回り、次年度への持越しが可能となった。同時に、次年度ではin vivoでの薬剤投与実験を計画しているため、投与物質の購入に充てるための予算を準備しておく必要があると考えた。上記の研究状況から、次年度の研究費の大半は実験消耗品代として計上する予定である。
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Research Products
(1 results)