2017 Fiscal Year Research-status Report
有用物質生産基盤の確立へ向けた糸状菌における二次代謝発現調節メカニズムの解明
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17K15467
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
石内 勘一郎 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (70608140)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物内生糸状菌 / 有用二次代謝産物 / 紫外線照射 / Paraboeremia sp. / Lycopodium alkaloids / huperzine A / 12-epi-lycopodine |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒカゲノカズラ科植物由来のアルツハイマー病改善薬候補化合物であるhuperzine A (HupA)生産糸状菌Paraboeremia sp. Lsl3の化合物安定生産株の確立とHupA生合成遺伝子発現メカニズムの解明を目指している。 本年度は、オニトウゲシバ (Lycopodium serratum var. longipetiolatum)より分離した内生糸状菌Paraboeremia sp. Lsl3の紫外線照射変異株を作出することでHupAの高生産株の取得を目指した。その第一段階として、211株の変異株を作出することに成功し、すべての株について代謝物分析を行った結果、HupAの高生産株は得られなかったものの、Lsl3KI076株において、HupAおよびlycopodineに加えてさらに1種の新規リコポジウムアルカロイド (1)を生産することを見出した。1は、極微量でありNMRによる構造解析手法を適用することが困難であった。そこで、9種のヒカゲノカズラ科植物より同化合物を生産するPhlegmariurus nummulariifoliusをLCMS分析により見出し、植物体より目的化合物の単離構造決定を行った。その結果、1は12-epi-lycopodineであることが明らかとなった。申請者は、さらに紫外線照射株の取得を継続しており、現在500株の変異株作出に成功している。またこれと並行して、Paraboeremia sp. Lsl3株の分子遺伝学実験システムの整備を進めている。同菌株は分生子を形成しない特徴をもっているため、形質転換実験に必要なプロトプラストの誘導が困難であったが、条件検討の結果、細胞壁溶解酵素としてyatalaseを使用することで比較的効率的にプロトプラストを誘導できることを見出した。またP. nummulariifoliusより8種の新規アルカロイドを単離し、その構造をNMR等の分光学的解析および誘導化により決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず計画通り糸状菌の紫外線照射変異株を順調に作出できた。目的化合物の高生産株の取得には至っていないが、検出限界以下に落ち込んだ目的化合物の生産性を回復することに成功したことは、保有する菌株が間違いなく目的化合物の生合成遺伝子をゲノム上に保持していることを示唆するものであり非常に重要な結果であると考えている。さらに新規アルカロイドの発見に成功し、計画当初は予想していなかった興味深い知見も得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き変異株の取得を進め、代謝物分析を行うことで目的化合物の高生産株の選抜を目指す。またLsl3株のゲノム解析を進め、目的生合成遺伝子の探索および目的遺伝子の発現調節に関与する遺伝子の探索を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度に計画されているゲノム解析費用補填のため。
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Research Products
(6 results)