2018 Fiscal Year Research-status Report
メタボロミクスを基軸としたプロアントシアニジン含有植物の薬理活性予測法の確立
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17K15474
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
甲斐 久博 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (60533221)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マオウ / ダイオウ / メタボロミクス / DI-EI-MS / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
1)プロアントシアニジン(PAC)含有植物(マオウ、ダイオウ)を用いた抗成人T細胞白血病(抗ATL)活性予測メタボロミクスモデルの応用展開 平成29年度作製した各種エキスを抗ATL活性試験に供した。マオウエキスではメタノールよりアセトンに強い活性が認められた。また、Ephedra equisetina、E. fragilis、E. distachyaが他の品種よりも強い活性を有することがわかった。ダイオウエキスでは根よりも葉において強い活性が認められた。しかし、個体差が大きく、活性の強い品種を明確にすることは困難であった。これらエキスのNMRを用いたメタボロミクスにおいて、マオウでは活性の強弱で分類ができた。また、ダイオウは部位を明確に分類することができ、活性についても強いサンプルがある程度、密集する傾向がみられた(学会発表済)。 2)抗ATL活性、DI-EI-MS、NMR各種実測値の再現性の検証を目的としたPAC含有生薬(マオウ、ダイオウ)の収集、エキス作製 本研究で扱っているマオウやダイオウは天然品であるが故、採集時期で含有成分や薬理活性に変化が生じることが予想される。そこで平成30年度は、令和元年度に実施予定である抗ATL活性、DI-EI-MS、NMR各種実測値の再現性検証のための植物採集を行った。即ち、平成29年8月に採集した同一個体の各植物から平成30年8月にも植物採集を実施した。その結果、研究協力者の協力のもと、マオウの地上部を14個体×2サンプル=計28サンプル入手することができた。これらをアセトンとメタノールにて抽出し56種のエキスを作製した。ダイオウも、根40種×2ロット分および葉43個体×2ロット分=計166サンプルをメタノールにて抽出しエキスを作製した。一部、生育不良により採集が困難であったサンプルもあったが、実験の再現性を取るのに必要な数を確保できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の目標であったマオウおよびダイオウのエキスの作製、NMR測定、DI-EI-MS測定、抗ATL活性評価について、遅滞なく全サンプルの実験を完了した。メタボロミクスについて、NMRデータから種の鑑別および抗ATL活性に対する予測モデルの構築まで終えた。また、今年度も明治薬科大学、武田薬品京都薬用植物園の協力のもと、予定通りマオウのエキス56種、ダイオウのエキス166種を作製することができた。 今年度の研究成果は、日本薬学会第139年会(2019年3月23日)にて2演題発表した。また、前年度に得られたブルーベリー葉のDI-EI-MSメタボロミクスに関する成果については学術論文に掲載された(Planta Medica, 85 (2019) 81-87.)。現在、NMRに関しても論文投稿準備中である。このように、学会発表2回と学術論文1報掲載、1報投稿準備中であることから、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得られた「ブルーベリー葉を用いた抗ATL活性予測メタボロミクスモデル」の結果を参考に、平成30年度に下地をつくった「PACを含むマオウおよびダイオウの抗ATL活性予測メタボロミクスモデル」について薬理活性予測を向上させる目的でモデルの検証を行う。この際、基原植物(種)、マオウでは雌雄の判別、ダイオウでは葉の鋸歯数など植物固有の形態にも着目して品質評価の候補となりうる因子を抽出する。さらに、含有成分PACの中で薬理活性の強弱を左右する特徴的な官能基を考察する。 また、今年度も平成30年度に作製した各種生薬エキスの抗ATL活性を把握する目的でATL細胞を用いたアッセイを行う。アッセイは既報に基づき、感染およびがん化具合の異なるATL関連細胞を用いる。抗ATL活性は、エキス添加時におけるATL関連細胞の増殖抑制具合を比色法によりIC50値 (50%阻害濃度値) を算出する。さらに同じエキスを用いてDI-EI-MSおよび NMRを測定し、メタボロミクスでブルーベリー葉と同様に抗ATL活性予測モデルを作成し、アッセイ結果(実測値)と照合する。さらに、基原植物(種)の同定に関して解析を行い、生薬の品質評価法に必要な因子を抽出する。令和元年度までにモデルを完成させ、2年分のモデルの再現性を検証する。 現在執筆中のブルーベリー葉のNMRメタボロミクスに関する成果を早期に投稿するとともに、マオウ、ダイオウに関しても学会発表、論文執筆にて成果発表をすすめていく。
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Research Products
(5 results)