2017 Fiscal Year Research-status Report
Drug development by drug repositioning for refractory cancer
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17K15485
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
今井 正彦 星薬科大学, 薬学部, 助教 (40507670)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん / 翻訳後修飾 / ドラッグリポジショニング / 細胞死 / スタチン |
Outline of Annual Research Achievements |
胆嚢がんは、早期発見が困難であり、gemcitabine等での化学療法が行われているが、10年相対生存率は約20%と低い、難治療性のがんである。胆嚢がんや膵臓がんでは、がん遺伝子産物であるK-rasの活性化変異が認められ、抗がん剤に対する抵抗性の一つの要因と考えられている。Rasの活性はメバロン酸経路に由来するイソプレノイドがrasタンパク質に共有結合することにより調節されている。一方、メバロン酸経路の律速酵素である 3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A (HMG-CoA) 還元酵素の阻害は、メバロン酸やタンパク質修飾基質であるファルネシルピロリン酸やゲラニルゲラニルピロリン酸の合成を抑制する。そこで本研究では、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるlovastatinをドラッグリポジショニングに基づくがん治療薬への応用を目指し、胆嚢がん細胞NOZ C-1に対するlovastatinによる増殖抑制とその作用機構の解析を行った。 まず、lovastatinのNOZ C-1細胞の増殖に及ぼす影響を検討したところ、濃度依存的な増殖抑制作用が認められた。また、lovastatinによる増殖抑制作用は、メバロン酸の添加により阻害された。さらに、オートファジーに関与するLC3の脂質付加体であるLC3-IIの発現がlovastatin処理により亢進していた。また、リソソーム酵素阻害剤であるE-64およびPepstatin Aをlovastatinと併用したところ、LC3-IIの蓄積が亢進し、lovastatinによる細胞増殖抑制は有意に回復した。よって、lovastatinはオートファジーを介して細胞増殖抑制を誘導することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、lovastatinによる増殖抑制作用は、脂質異常症の治療と同様の機構であるHMG-CoA還元酵素阻害作用が関与することが示唆され、メバロン酸経路が関与することが考えられた。また、増殖抑制機構にオートファジー誘導が関与することを明らかにすることが出来た。しかしながら、ras (特にK-ras) の翻訳後修飾を解析するために2次元電気泳動で解析を進めたが、K-rasのスポットを分離・検出することが出来なかった。本研究の成果からメバロン酸経路の重要性が考えられたため、今後もK-rasのプレニル化およびその他の翻訳後修飾の解析を進めるとともに、ras以外のタンパク質の翻訳後修飾の関与についても解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画として、K-rasの翻訳後修飾の解析を進めるため、K-rasのスポットの分離・検出法を構築する。また、K-ras以外のターゲットタンパク質の発現変化や翻訳後修飾の解析を行う。さらに、ターゲットタンパク質のノックインあるいはノックアウトによるlovastatinによる増殖抑制機構への関与を進める。さらに、当初の予定通り、担がん動物を用いたin vivoでの検討を行い、lovastatinのドラッグリポジショニングに基づくがん治療薬の応用を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度にターゲットタンパク質を同定する予定であった。また、当該タンパク質の翻訳後修飾等の解析を行うため、特異抗体を購入する予定であった。しかしながら、ターゲットタンパク質の同定に至っておらず、次年度使用額が生じた。 次年度にターゲットタンパク質を同定し、当初の予定通り抗体の購入に使用する。また、当初の予定通りターゲットタンパク質のノックイン・ノックアウトを行い、ターゲットタンパク質のがん細胞の細胞増殖への寄与を明らかにする。さらに、担がんマウスによるin vivo実験、がんの浸潤・転移に及ぼす影響についても当初の予定通りに研究を行う。
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