2017 Fiscal Year Research-status Report
機能未知トランスポーターの炎症応答における重要性・制御機構の解明
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17K15499
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 忠快 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (90736050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | transporter / solute carrier / inflammation / macrophages |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、炎症刺激時に発現量が大きく上昇するSLC-Xの個体レベルでの重要性解析、及びその分子機構解析を目的としている。本年度は以下のような知見を得た。SLC-Xの個体での重要性を評価すべく、炎症刺激として頻用されているlipopolysaccharide (LPS) を腹腔内投与し、生存率を評価したところ、KO群ではコントロール群に対し有意に生存率が低下した。同様にLPSを腹腔内投与した際の血漿中TNFaレベルを評価したところ、KO群では有意に上昇していたことから、LPS刺激に対する炎症応答がKOマウスでは過剰になっているものと推察される。分子機構を解明すべく、LPS刺激時にSLC-Xが強く発現誘導されるマウス腹腔内マクロファージ (MPMs) において炎症性サイトカインなどのmRNAレベルを評価したものの、KOマウス由来のMPMsにおいて変化は認められなかった他、ELISAを用いてタンパク質レベルで評価した際にも差は確認できなかった。in vivoで認められているフェノタイプをマクロファージの機能だけで説明することは困難であることが推察される。MPMsのメタボローム解析結果をpathway解析したところ、解糖系への影響が見出された。炎症刺激時には酸化的リン酸化が抑制され、解糖系が亢進するという代謝リプログラミングが起きることが広く知られており、この変化はマクロファージなどの免疫系細胞が正常に炎症応答するために必要である。解糖系の評価指標である細胞外への乳酸の分泌を評価したところ、コントロールマウス由来のMPMsではLPS刺激により乳酸分泌が増加するものの、KOマウス由来のMPMsではその増加の程度が減少していた。すなわちSLC-X KOにより、炎症刺激時の解糖系亢進という代謝リプログラミングに異常をきたしているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SLC-XのKOマウスを樹立し、本トランスポーターが実際に個体レベルで炎症応答の制御に関与していることを見出すことに成功した。しかしながらその分子機構解析に関しては、マクロファージにおいて炎症刺激時の代謝リプログラミングに関与することを見出したものの、in vivoのフェノタイプを説明する機構の発見には至っていない。特に分子機構に関しては、メタボローム解析を行ったものの、本トランスポーターの基質を見出すに至っておらず、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り個体でのフェノタイプ解析と分子機構解析を並行して進めている。In vivoとin vitroとのギャップを埋めるため、マクロファージという単一な集団ではなく、ヘテロな細胞系においてSLC-X欠損の効果を評価する予定である。現在マウス末梢血単核球 (PBMC) に着目している。本画分では20-30%ほどが顆粒球によって占められているが、Immunological genome project (https://www.immgen.org/) などのデータベースより、SLC-Xが顆粒球にも強く発現していることを見出している。LPS腹腔内投与をした後のPBMC画分での血球細胞のポピュレーションの変化や炎症性サイトカインなどの変化をコントロール群、KO群間で比較・評価する予定である。また今回本トランスポーターが解糖系を制御するという知見を得たがその制御機構は不明である。詳細な分子機構解析を行うに辺り、遺伝子操作が容易でないマクロファージを用いることは適切ではないと考えられる。そこでSLC-Xが高発現し、かつ遺伝子操作が容易で詳細な分子機構解析を行うに適したモデル細胞をまず探索する予定である。当該細胞を用いてSLC-Xの基質同定など、分子機構解析に取り組み、詳細な分子機構の解明に取り組む。特に今年度の取り組みでデータ解析の技術を磨いているため、トランスクリプトーム解析などのオミックス解析に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
海外渡航費を計上していたが、招待講演となったため、費用の削減ができた。 物品費としては主に本トランスポーターの詳細な作用機序解析を想定しており、特に抗体やトランスフェクション試薬などを計上していた。しかしながら本年度は既に取得済みであったメタボローム解析の結果をデータ解析することにより作用機序解析を進めることができたため、これらの物品費を抑制することができた。 一方、詳細な分子機構はまだ見出せていない。本年度のメタボローム解析結果のデータ解析よりSLC-Xの作用機序の一端を見出すことができた経験から、個別解析よりもオミックス解析と引き続くデータ解析により研究を強力に推進可能であると期待される。そこでメタボローム解析とは異なる階層を評価可能なトランスクリプトーム解析に取り組みたいと考えている。次年度繰り越し分は解析の受託費用、得られるデータ解析に用いるパソコンなどの費用を物品費に加えて計上する予定である。
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Research Products
(5 results)