2017 Fiscal Year Research-status Report
高尿酸血症によるABCG2の翻訳後修飾異常と代謝性疾患の連関による血管障害機構
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17K15500
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小森 久和 金沢大学, 薬学系, 助教 (00634180)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ABCG2/BCRP / 高尿酸血症 / 血管障害 / 内在化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高尿酸血症は慢性炎症を基盤とするメタボリックシンドロームと連関によって病態の悪循環を引き起こす。なかでも心血管疾患の独立した危険因子として知られている。尿酸は細胞外でラジカルをトラップすることで抗酸化作用を発揮する一方、細胞内ではNADPHを活性化して酸化障害を引き起こす。したがって、細胞内尿酸濃度の上昇が細胞障害の原因であると考えた。本課題では、血管の恒常性維持に重要な内皮細胞に焦点をあて、尿酸による血管障害メカニズムを明らかにすることを目的に、細胞内尿酸濃度変化を明らかにするとともに、その調節機構について検討した。 平成29年度では血管内皮細胞モデルとしてヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) を用いて、高尿酸血症状態の尿酸濃度で処置によって尿酸排出トランスポーターの一つであるABCG2の形質膜発現が減少することを示した。また、その機序として、細胞内酸化ストレスによるAktのリン酸化抑制が関与していることを報告した(Komori et al, Biochim Biophys Acta, 1860(5):973-980, 2018)。したがって、血管障害が引き起こされるメカニズムとして、高尿酸濃度により細胞内で増加した尿酸がABCG2の細胞膜発現を低下させ、尿酸蓄積を亢進させることが示唆された。 ABCG2の局在を制御することができれば,基質の蓄積量を調節することができると考えた。転写から翻訳過程での調節は数分から数日をかけて起きる長期的制御であり,翻訳後修飾は数分から数時間で起きる短期的制御である.そのため,薬物を用いて輸送体の機能を調節するには,速やかに制御できる翻訳後修飾が有用なターゲットである.また、翻訳後修飾はフォールディング,トラフィッキング,安定性に影響を及ぼす.そこで,本申請課題では,翻訳後修飾に基づくABCG2の局在変化を明らかにすることを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、HUVECにおいて高尿酸血症によるABCG2の内在化が細胞内で尿酸量と酸化ストレスを増大させ、細胞障害を引き起こすことを報告した (Komori et al, Biochim Biophys Acta, 2018)。 また、高尿酸血症と合併する病態を想定し、HUVECにおいてABCG2の発現を変動させるリガンドを探索したところ、PI3K/Akt経路を抑制することで知られる別のリガンドでもABCG2の形質膜発現が減少する結果が予備的検討により得られた。したがって、PI3K/Akt経路がABCG2の形質膜発現に重要であることが示唆された。本経路の活性はリン酸化によって調節される。リン酸化は翻訳後修飾の一つであることから、ABCG2の発現減少が翻訳後修飾についても調節するか検討を進めている。しかし、HUVECにおけるABCG2の発現が低く翻訳後修飾を評価しづらいことから強制発現系によって検討する準備を進めている。タグ付きABCG2などDNAコンストラクトを作製済みであり、概ね準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、これまでに報告したABCG2の局在変化についてさらに詳細なメカニズムを検討する。 具体的には、まず尿酸あるいはPI3K/Akt阻害剤で処置した際の翻訳後修飾を評価する。タグ付きABCG2をHUVECにトランスフェクションし、リガンド処置後に免疫沈降によってABCG2を回収し、各種抗体を用いて翻訳後修飾されたABCG2を検出する。また、実際にその翻訳後修飾がABCG2の内在化に寄与するかを明らかにする。さらには、ABCG2の翻訳後修飾部位についても検討する予定である。 加えて、タンパク質発現量の低下および形質膜からの内在化が報告されているABCG2 Q141Kに焦点をあてる。この分子は日本人においてSNP頻度が高いことで知られ、GWASによって血清尿酸値を増大させる原因遺伝子として報告されている。そこで、Q141K変異体その翻訳後修飾を調査することによって内在化機序を評価する。また薬剤を用いて翻訳後修飾を制御することでQ141K変異体のレスキュー方法について探索する予定である。
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