2018 Fiscal Year Research-status Report
アルブミンの質的変動を基盤とした抗MRSA薬TDMへの展開
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17K15512
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
田中 遼大 大分大学, 医学部, 薬剤主任 (30781736)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルブミン / 翻訳後修飾 / タンパク結合率 / 抗MRSA薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では抗MRSA薬のうち、血中タンパク結合率の大きいテイコプラニン(TEIC)およびダプトマイシン(DAP)に焦点を置き、アルブミンの質的変動が薬物の遊離型分率に与える影響と病態の進行度との関連性を明らかにすることを目的としている。平成30年度の研究実績は以下のとおりである。 1.集中治療部(ICU)入室患者2例を対象に平成29年度で確立したUPLC-MS/MSを用いた総・遊離型DAPの高感度同時定量法の臨床適応性を評価した結果、最高血中濃度およびトラフ値の総・遊離型濃度の測定に成功し、高感度定量法が確立された。本定量法を用いて、ICU患者における遊離型分率を確認したところ、CCr:17.5 mL/minの症例は平均0.076,CCr:140.5 mL/minの症例は平均0.039と腎障害者で2倍程度高値を示した。しかし、酸化修飾型アルブミンの割合に変動は認められず、遊離型分率の変動にアルブミンの質的変動は影響しない可能性が考察された。 2.過酸化水素を触媒にシステインを添加することで酸化修飾型アルブミン入り血漿を調整し、DAPのタンパク結合率に影響を与えるかIn vitroにおける検討を行った。ESI-TOF-MSを用いた検討結果より、過酸化水素濃度の上昇に伴い、過度に酸化されたアルブミン血漿の作製に成功した。調製した酸化アルブミン血漿を用いて、DAPのタンパク結合率に与える影響を評価したところ、DAPのタンパク結合率は酸化修飾型アルブミン率の上昇に影響を受けず、概ね一定であることが明らかとなった。また、グルコースを用いて調製した糖化型アルブミンについても、糖化型修飾体の増加に影響を受けずDAPのタンパク結合率は一定であった。以上より、DAPのタンパク結合率にアルブミンの質的変動は影響を与えない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DAPのタンパク結合率に関する検討は順調であり、総・遊離型濃度の測定系の確立やIn vitroの実験系も順調に進んでいる。しかし、TEICのタンパク結合率に関する検討は、遊離型濃度まで測定可能な定量系がまだ完全には確立していない。倫理委員会の承認およびサンプルのリクルートは開始しているものの、測定系が確立していないためIn vitroの検討も行えていないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度まではUPLC-MS/MSを用いた定量法の確立を試みていたが、重水素置換体の内部標準物質が発売されておらず、DAPの重水素体を用いた結果、内部標準としての機能を示さなかった。そのため、今後はHPLCを用いた定量法にシフトし、系の確立を試みる。また、TEICの総・遊離型濃度の定量法の確立と同進行でサンプルのリクルートを継続する。定量法を確立後、サンプルの測定ならびにIn vitroでの検討を実施し、TEICのタンパク結合率にアルブミンの質的変動が影響を与えるか評価する。
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Causes of Carryover |
TEICの定量法の確立が当初の予定よりやや遅れており、購入した消耗物品が当初の予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画としては、HPLC用カラム、各種標品、各種内標準物質標品、限外濾過膜等を購入する。また、平成30年度の成果について、論文投稿費および学会発表する際の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)