2017 Fiscal Year Research-status Report
薬物吸収における非攪拌水層構成タンパク質の機能及び分子機構の解明
Project/Area Number |
17K15522
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
岸本 久直 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80723600)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 粘液層 / mucin / MUC1 / 相互作用 / 薬物吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管上皮細胞表面に存在する粘液層は、mucinを主成分とした複雑な網目状の高次構造を形成していることから、薬物の膜透過過程において抑制的に働くことが指摘されている。しかし、mucinは、約20種類のmucin遺伝子 (MUC) が同定されているにも関わらず、薬物の膜透過性とmucin分子との関連性について着目した検討は未だなされていない。そこで本年度は、脂溶性薬物の腸管吸収における薬物-粘液間の直接的な相互作用を評価し、薬物の腸管吸収における粘液層の影響との関連性を検討した。さらに、MCF7細胞においてMUC1安定発現系を作製し、薬物の細胞膜透過性に及ぼすMUC1分子の影響について検討した。 薬物-粘液間相互作用の評価は、各種被験薬物とブタ胃由来mucinを混合した溶液の蛍光スペクトルを解析し、mucin由来の蛍光強度の変化からStern-Volmer式を用いて消光速度定数(Ksv)を算出することで相互作用を定性的に評価した。その結果、mucin由来の蛍光強度は、griseofulvin、antipyrine、rifampicinなどの薬物において濃度依存的に低下し、mucinとの相互作用とDTT投与による脂溶性薬物の膜透過性の変化には一定の相関性が認められることが明らかとなった。一方、MUC1安定発現系MCF7細胞に高脂溶性薬物であるpaclitaxel (10μM) を添加し、添加後の細胞生存率を指標として、paclitaxelの細胞内取り込み量に対するMUC1発現の影響を評価したところ、mock細胞に比較して有意な生存率の維持が認められた。 以上より、薬物-粘液間の直接的な相互作用を評価することで、腸管吸収において粘液層の拡散過程が律速となる薬物を予測できる可能性が示唆された。また薬物の膜透過性に対してMUC1が重要な制御因子となる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における研究目的の一つである「薬物の腸管吸収を制御する分子機構の一つとしての膜結合型mucinの関与を明らかにする」に対し、重要な結果を得ることができた。また、ゲノム編集技術を応用した膜結合型mucinの機能解析及び安定発現細胞の作製にも着手している。従って、本研究課題の基盤となる研究成果が得られていることより、総合的に研究計画はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における研究目的である「薬物吸収を制御する分子機構の解明」に加え、最適なヒト腸管吸収予測システムの構築及び非攪拌水層を標的とした吸収改善技術の開発に向け申請した研究計画に従って研究を進めていく予定である。また、膜結合型mucin発現系細胞を分子種ごとに樹立し、膜透過性とmucin分子種差との関連性について、その構造・分子サイズの違い及び種差を念頭に統合的な解析を行うだけでなく、医薬品開発において重要な情報となることを考慮し研究を推進していく予定である。
|
Research Products
(4 results)