2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the molecular mechanism and functions of mucus-glycoprotein in intestinal drug absorption.
Project/Area Number |
17K15522
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
岸本 久直 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80723600)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粘液層 / mucin / 薬物吸収 / 抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、薬物吸収に対するmucinのバリア機能の形成及びその制御に関する分子機構解明を目的として、MCF7細胞において膜結合型mucin (MUC1又はMUC13) 安定発現系を作製し、薬物の細胞膜透過性に対するmucinの影響について検討した。まず、高脂溶性のモデル薬物として、抗がん剤であるpaclitaxel (PTX)、5-fluorouracil (5-FU)、doxorubicin (DOX) を選択し、MUC1安定発現系MCF7細胞における細胞毒性を評価した。各種抗がん剤添加後の細胞生存率は、mock細胞において用量依存的に低下したのに対し、MUC1安定発現細胞では有意に維持された。特にPTXのLD50値は、mock細胞及びMUC1安定発現細胞において、それぞれ0.16μM及び106.02μMと算出され、MUC1発現によってPTXに対する感受性が顕著に低下することが示された。同様に、5-FU及びDOXに対する感受性は、PTXに対する変化の程度とは異なるものの、MUC1発現によって顕著に低下することが示されたことから、MUC1が高脂溶性薬物の膜透過性を制御する重要な生体因子である可能性が示唆された。一方、MUC13安定発現細胞においては、抗がん剤に対する感受性の変化は認められず、高脂溶性薬物の細胞膜透過性に対する膜結合型mucin分子の効果には、明確な分子種差が存在することが示唆された。 以上の結果は、薬物の細胞膜透過性に対するmucin分子の重要性を示し、腸管膜透過過程における新たな制御機構の提唱を可能にする有用な知見となるものと考えられた。今後、薬物の消化管膜透過機構において粘液層を中心とした腸管表面構造をより詳細に理解することで、ヒト腸管における薬物吸収の高精度予測を可能にし、医薬品開発における腸管吸収の適正な評価法の確立に貢献できるものと期待される。
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Research Products
(9 results)