2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞を用いた難治遺伝性腎疾患に対する新規病態モデルの開発
Project/Area Number |
17K15546
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前 伸一 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (50749801)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ヒトiPS細胞 / 常染色体優性多発性嚢胞腎 / 腎集合管 |
Outline of Annual Research Achievements |
常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease; ADPKD)は、進行性に多数の腎嚢胞が形成されることにより腎腫大が生じ、末期慢性腎不全に至る疾患である。現在までのところ、透析療法や腎移植などの腎代替療法に加え、嚢胞の増大を抑制する対症療法が施されているが、嚢胞形成を根本的に阻害する治療法は確立されていない。ADPKDに対する新規治療薬を探索するためには、腎嚢胞形成を再現する新規in vitro病態モデルの開発が必要である。 ADPKDにおける腎嚢胞は、尿細管および集合管に由来し、集合管からより多くの嚢胞が形成されると考えられている。そこで、ヒトiPS細胞から集合管を作製することが適切な病態モデル作製につながるのではないかとの着想に至った。平成29年度は、ヒトiPS細胞から集合管を派生させる胎生組織である尿管芽を分化誘導する方法の開発を行った。また、ADPKDの原因遺伝子であるPKD1をノックアウトしたヒトiPS細胞の樹立を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎臓は尿管芽と後腎間葉との相互作用によって形成されるが、それらを派生する中間中胚葉は異なっていることが知られている(Taguchi A., 2014)。発生早期の前体節中胚葉は尿管芽に分化しうる前方中間中胚葉へ分化し、一方で後期には後腎間葉への発生運命を有する後方中間中胚葉に分化すると考えられている(Takasato M., 2015)。そこで、まず、ヒトiPS細胞から前方原始線条を経て前体節中胚葉を分化誘導する方法を開発した。次に、胚の胴部で発現しているFGFおよびレチノイン酸シグナルが中間中胚葉誘導因子であることに着目して、前体節中胚葉から前方中間中胚葉の作製を試みたが、前方中間中胚葉マーカーの発現を確認することはできなかった。しかし、前方原始線条はFGF8およびレチノイン酸を加えて培養することで、効率良く前方中間中胚葉に分化することが分かった。さらに、前方原始線条から内胚葉への分化を抑制し、腹側化を抑制することで前方中間中胚葉への分化誘導効率を約7割まで向上させることができた。 作製した前方中間中胚葉は、WNTおよびBMPシグナルの濃度勾配により、背側化を誘導することで、ウォルフ管細胞へ分化誘導することが可能であった。さらに、ウォルフ管細胞から成る細胞塊を作製したところ、上皮化が促され、既知の尿管芽誘導因子によって、尿管芽様構造が形成されることが分かった。ここまでの結果を、Biochemical and Biophysical Research Communications誌で発表した(Mae SI., 2017)。 CRISPR/Cas9システムを用いて、PKD1ノックアウトヒトiPS細胞を樹立することを試みたが、遺伝子変異導入予定の領域に変異を有するヒトiPS細胞ではADPKDの表現型がほとんど出ないことが報告された(Cruz NM., 2017)。そこで、ターゲット領域を変更し、再度、CRISPR/Cas9システムでの樹立を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞から尿管芽様構造を作製することができるようになったが、分岐し、腎集合管に分化する能力を有しているか否かを検証する。また、尿管芽から腎集合管への分化誘導法を確立することを目指す。そして、PKD1ノックアウトiPS細胞を樹立し、本課題で開発する方法を用いて腎集合管細胞を作製し、ADPKDに対する病態モデル作製の可能性を模索する。
|
Research Products
(1 results)