2017 Fiscal Year Research-status Report
網膜視細胞における明暗順応制御メカニズムの解明と網膜保護への応用
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17K15548
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
茶屋 太郎 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (50747087)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 網膜 / 水平細胞 / 神経節細胞 / 明順応 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜水平細胞は視細胞へフィードバックシグナルを送る抑制性の介在ニューロンとして知られているが、水平細胞の神経回路レベルでの機能についてはあまり理解が進んでおらず、個体の視覚にどのように寄与するのかは明らかになっていない。私たちは成体網膜において遺伝学的に水平細胞が除去されたマウス(dHCマウス)を作製した。網膜電気生理に対する水平細胞の役割を調べるために、多点電極アレイを用いて単離網膜における光刺激に対する神経節細胞のスパイク応答を測定した。dHCマウス網膜においては神経節細胞の光刺激に対する応答の多様性が減少しており、拮抗型受容野の周辺領域の形成が減弱した神経節細胞の割合が増加していた。また、dHCマウス網膜ではコントロールマウス網膜と比較して最適空間・時間周波数が低周波数になっている神経節細胞の割合が増加していた。様々な輝度の背景光下で光刺激を神経節細胞に提示したところ、コントロールマウス網膜では背景光が存在しない条件と比較して背景光存在下では光刺激強度の増加に応じて発火率の上昇、潜時の減少が観察されたのに対して、dHC網膜ではこのような背景光によるダイナミックレンジの増加は観察されなかった。このことから水平細胞は明順応に必須であることが示唆された。最後に水平細胞の個体レベルの視覚機能への影響を調べるために視運動性応答を測定した。dHCマウスにおいてコントロールマウスと比較して低・中空間周波数での視運動性応答が上昇していた。また、dHCマウスにおいてはコントロールマウスと比較して有意に最適空間周波数が低周波数側へとシフトしていた。このことから水平細胞は個体レベルで空間周波数特性を制御することが示唆された。以上の結果より、水平細胞は網膜の視覚情報処理において多様な役割を担うことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究により網膜視細胞の明暗順応制御メカニズムの一端が明らかとなり、論文として発表した(Chaya et al., Sci. Rep. 7(1):5540, 2017)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは視細胞にフィードバックシグナルを送る水平細胞に着目してきたが、今後は視細胞の細胞内における明暗順応制御メカニズムに焦点を当てて研究を行いたい。
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