2017 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of mechanisms of wound-induced angiogenesis by our established live-imaging in the adult zebrafish
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17K15565
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
弓削 進弥 日本医科大学, 先端医学研究所, 助教 (50723532)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管新生 / 創傷治癒 / 損傷血管 / 内腔圧 / ペリサイト / 虚血 / ライブイメージング / トランスジェニックゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成30年度分も含めた3つの目的・計画全てに取り組んだ。 ①の創傷治癒時の血管新生全過程の解明では、(1)血管1本の創傷、(2)表皮~真皮の「浅い創傷」、(3)筋肉層まで達する「深い創傷」の3つを解析した。(1)と(2)では、残存した損傷血管からの活発な伸長と側枝の出芽・伸長が創傷部を覆い、伸長吻合後1週間程度、内皮細胞とペリサイトの過増殖が起こり、その後1-3ヶ月かけて両者とも創傷前の血管と同じぐらいの数に減少することを発見した。(3)では、前述の現象に加え、筋肉層から真皮への血管網の活発な移動を見い出した。 ②の血管修復と組織修復の相互作用の解明では、まずゼブラフィッシュ皮膚組織片のwhole-mount免疫染色法を独自に確立し、同手法により虚血組織同定を行ない、次に血管内皮増殖因子Vegfシグナルの阻害実験を行ない、損傷血管の血流に対して上流側と下流側では周辺組織の虚血の程度に顕著な違いが観られず、ともにVegfシグナルを受けることを示した。すなわち、前実験で同定した「損傷血管は下流側が活発に伸長するが上流側は伸長しにくい」原因は他にある可能性を示唆した。さらに、皮膚表皮を可視化したトランスジェニックゼブラフィッシュを樹立し、周辺組織の修復も解析できるようにした。 ③の損傷血管の上流側と下流側の伸長の違いと内腔圧の関連の解明では、上流側の内腔圧を消失させると上流側も下流側と同様に伸長すること、さらに内腔圧が負荷した損傷血管の先端では、アクチンが減少し、内皮細胞が前後極性を持ちにくくなり、その過程で先端を膨張させる伸展刺激が負荷されている可能性を示し、それを検証するためにin vitroで内皮細胞に伸展刺激を与える実験系を確立した。 以上より、新たな実験系を3つ確立するとともに、創傷時の血管新生の過程と制御機構の両方で新しい発見をもたらすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で設定した3つの目的・計画において、①と③は8割以上、②は半分以上達成できており、全体としては順調に進んでいる。①~③どれも経過観察・解析とそれらの繰返しが重要な研究であるため、研究の効率化のために①~③を同時に遂行してきている。 ①では、内皮細胞だけでなくペリサイトも過増殖・その後の減少が起こることが分かったため、両者を研究していく必要があるが、それでも予定通りに進めることができている。 ②では、虚血組織を同定したこと、Vegfシグナルの関与を示したこと、さらに皮膚表皮を可視化したトランスジェニックゼブラフィッシュの樹立に成功したことでかなりの進展を得た。Vegfのin situ hybridization、免疫組織化学染色は実験系の確立で難航しており、虚血やVegfシグナルの創傷時血管新生への関与の詳細、血管と周辺皮膚の同時解析は取組み中である。 ③では、損傷血管の先端が内腔圧による影響を受けることを示したが、その過程で、アクチンの減少、内皮細胞の前後極性の消失などを発見し、さらに内腔圧が先端を膨張させる、すなわち損傷血管の先端に伸展刺激を与える可能性を見出し、当初の見込みよりも多くの新しい制御機構を明らかにできつつあり、研究すべきことが増えてきているが、それでも予定にしたがって進めることができている。 今後は、創傷時血管新生の制御機構をできるだけ詳細に解明することに力を入れたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で設定した3つの目的・計画で、当初の見込みよりも多くの新しい現象と新しい血管新生制御機構の可能性を発見し、さらに新しい手法を少なくとも3つ確立したため、研究の可能性と展望が当初の予定よりも広がった。今後は以下の点に力を入れて研究していきたい。 目的①では、内皮細胞だけでなくペリサイトも過増殖・その後の減少が起こるため、損傷血管の伸長修復時において内皮細胞とペリサイトの両方を解析する。目的②では、ゼブラフィッシュ皮膚組織片のwhole-mount免疫組織化学染色法を独自に確立したため、同手法により、虚血組織やまだ抗体を得られていない血管内皮増殖因子Vegfの産生部位に限らず、他のさまざな液性因子の産生も調べていける可能性を得た。時間の許す限りいろいろな液性因子の関連も調べていきたい。いっぽう、皮膚表皮を可視化したトランスジェニックゼブラフィッシュは、従来用いてきた蛍光タンパク質のEGFPやmCherryではなくiRFP670(赤外蛍光)での樹立に成功したため、3色以上の蛍光タンパク質を用いたイメージングが可能になった。たとえば血管をEGFP、ペリサイトをmCherry、周囲の表皮細胞をiRFP670で同時に解析することも可能にした。血管だけでなく組織も調べられると、血管に限定しない創傷治癒全体をライブイメージングで研究できるようになるため、本研究に続く次の研究の樹立にもつながると考える。 目的③では、現在、内腔圧が損傷血管の先端を膨張させ伸展刺激を与え、その結果、先端のアクチンが減少し、アクチンによる葉状仮足形成などが阻害されて、内皮細胞が前後極性を持てなくなる可能性を示唆しており、新たに内皮細胞への伸展刺激、アクチン、内皮細胞の極性に注目して研究を進めていく。さらに時間の許す限りこれらの制御過程に関わる分子の探索も行なっていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究は、科研費支給年度より前から取り組んでおり、実験に必要な設備・器具の全ては所属先の日本医科大学福原研究室で整っており、実験に必要な試薬・消耗品の多くもすでに購入したものを利用することができた。さらに学会出張では、1回は大学内での開催で費用は不要であり、2回は大学から費用が支給された。したがって、当該年度は、研究に必要なノートパソコンと付属機器の購入、および2回の学会出張に科研費を使用した。しかしながら次年度は、新たに試薬や器具を購入する必要があり、また研究室で用いているデスクトップパソコンの故障で新たなデスクトップパソコンの購入が必要になる。
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Research Products
(6 results)