2018 Fiscal Year Research-status Report
新規血漿因子HRGによる敗血症Immunothrombosis抑制機構の解明
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17K15580
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
和氣 秀徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60570520)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HRG / 敗血症 / Immunothrombosis / In vivoイメージング / 血管内皮障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cecal ligation and puncture(CLP)敗血症モデルは、非常に結果のばらつきが大きく解析が困難であると判断し、今回から、よりばらつきの少ないLipopolysaccharide(LPS)誘発敗血症モデルを採用することとした。また、RNAiによるHistidine-rich glycoprotein(HRG)ノックダウンの手法は費用対効果が低い為、HRGノックアウトマウスを使用することとした。上記のモデル及びマウスを用いて、HRGの有無による腸間膜血管内の免疫血栓形成(Immunothrombosis)や血管内皮障害に対する影響を好中球、血小板および血管内皮を染め、生きたままイメージングをすることで調べた。HRGノックアウトマウスは野生型マウスと比べて有意に腸管膜血管内免疫血栓形成が亢進し、血管内皮細胞も障害されることが明らかとなり、この結果はHRGが敗血症病態下の免疫血栓形成調節に非常に重要な役割を担っていることを示唆している。 また、敗血症病態形成において鍵となる肺における免疫血栓形成および肺障害に対するHRGの作用を明らかにする為に必要となってくる肺のin vivoイメージング手法を確立した。肺をイメージングする時、ⅰ)肺を露出すると呼吸が困難となり動物が死亡しイメージングできない。ⅱ)肺が呼吸により動くと焦点を合わせられない。という2点の問題に対して、人工呼吸器を導入し、露出した肺の一部をカバーガラスに生体接着剤で固定し、そのカバーガラスを顕微鏡のステージに固定するという手法により解決した。 さらに、敗血症における免疫血栓形成を誘導すると考えられる細菌由来ポリリン酸とHRGが結合することを見出し、このポリリン酸がHRGの好中球正球化作用や細胞外活性酸素放出抑制作用と拮抗することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の重要な目的の一つである肺のin vivoイメージング手法を確立した。具体的には人工呼吸器下にマウスの片肺を露出させ、露出した肺の一部をカバーガラスに生体用瞬間接着剤を用いて固定した。これにより観察部位における肺の呼吸による影響を極力減じることに成功した。 また、LPS誘発敗血症モデルを作成し、好中球や血小板さらに血管内皮細胞をイメージングすることで、HRGノックアウトマウスと野生型マウスの敗血症時免疫血栓形成や血管内皮障害の違いにおいても比較を行った。HRGノックアウトマウスは野生型マウスと比較して有意に腸管膜血管内免疫血栓形成が亢進し、血管内皮細胞も障害されていることが明らかとなった。 さらに、HRGは敗血症時に形成される免疫血栓の細菌由来誘導因子と考えられるポリリン酸と結合することを明らかにし、ポリリン酸はHRGによる好中球制御と拮抗することを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
肺のイメージング法を確立したので、今後はLPS誘発敗血症モデルを用いて、肺内におけるHRGノックアウトマウスと野生型マウスの免疫血栓形成や血管内皮障害の違いを好中球、血小板、血管内皮を染色することで観察する。また、好中球や血管内皮表面上の接着分子系(ICAM-1, VCAM-1等)の発現も調べる。さらに、敗血症では肺障害だけでなく腎障害もよく起こる為、腎のイメージングも行う予定にしている。加えて、免疫血栓形成の誘導をLPSではなくポリリン酸を用いて行う動物モデルの作成にも挑戦する。
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