2017 Fiscal Year Research-status Report
継続的運動負荷に対する心臓の順応とその維持による心保護効果獲得機構の解明
Project/Area Number |
17K15585
|
Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
冨田 拓郎 (沼賀拓郎) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (60705060)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 筋萎縮 / 自発運動 / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの組織と同様に心臓においても、日常的な運動が、慢性心不全の予防および予後改善につながる。この運動による心保護効果には、急性的な効果と、より安定した遺伝子発現変化を伴う慢性的な効果があると考えられる。しかしながら慢性的な心保護効果獲得の機構は未解明である。本研究は、継続的な運動負荷による遺伝子発現の変動を網羅的に解析し、継続的運動負荷に心臓が順応していく過程を解明する。最近申請者は、心不全の増悪因子としてTRPC3チャネル依存的活性酸素(ROS)産生機構を明らかにした。より具体的な運動による心保護効果獲得の候補メカニズムとして、運動に誘導される内因性のTRPC3依存的ROS産生の阻害因子を探索する。以上から継続した運動による心保護効果を解明し、運動効果を模倣する薬剤開発の基盤確立を目指す。本年度は、マウスに自由運動を6週間負荷し、その後2週間の非運動期間を設けた後に、抗がん剤ドキソルビシンを投与し、それによる心萎縮や骨格筋萎縮について検討した。その結果、運動を継続的に6週間したマウスにおいては、心機能の改善が見られ、これまでの知見が裏付けられた。しかしながら、2週間の非運動期間を設けたマウスでは、ドキソルビシンによる効果が逆に増悪した。これらマウスにおいては、体脂肪率が非運動群のマウスに比べて低下しており、それがドキソルビシンの毒性を上昇させる結果となったと考えられた。また運動によりTRPC3のC末端と相互作用する因子の候補を同定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、抗がん剤ドキソルビシン投与に誘発される筋萎縮に対して継続的な運動が与える影響を解析した。当初の予測とは異なり、継続運動負荷後に非運動期間を挟んだマウスにおいて、運動による筋萎縮抵抗性が減弱してしまった。この結果は、運動が単純に筋組織に対して頑健性を付与する訳ではなく、脂肪組織の低下等の様々な複合的要因が含まれることが示唆された。しかしながら運動負荷は確かにドキソルビシンよる筋毒性を低下させることが示された。一方、これまでに筋毒性発症の分子メカニズムの候補であるTRPC3-Nox2の機能連関について、その相互作用に必要となるTRPC3のC末端と相互作用する因子の同定を試み、一つの候補分子が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討から、継続運動負荷と非運動期間の設定をより詳細に検討する必要があることが明らかになった。運動による複合効果を骨格筋に対する影響のみ抽出するため、マウスの給餌についての工夫が必要となると考えられる。自発運動負荷の負荷期間・休止期間をさらに詳細に検討し、ストレス誘発性心不全のリスク低下が観察できるタイムコースおよび飼育条件を決定する。 本年度に同定した、運動負荷に伴いTRPC3のC末端との相互作用が増強する分子の生理的意義を次年度は解析する。候補分子はこれまでに、心不全時に発現が減少することがすでに報告されている。in vitro過剰発現系でのTRPC3との相互作用について確認するとともに、相互作用が両分子に与える影響を解析する。次に、ラット新生児心筋細胞を用いて、内在的な両者の相互作用を解析する。siRNAを用いたノックダウンにより候補分子の発現を抑制し、心筋細胞の表現型に与える影響を解析する。in vitroでの結果を基に、crispr/Cas9系によりノックアウトマウスあるいはTRPC3との相互作用が阻害される変異をノックインし、運動負荷やストレス暴露による心臓機能の変化を解析する。
|
Causes of Carryover |
本年度の実験計画においては、その予算の多くを網羅的な遺伝子解析費用に充てることを想定していた。しかしながら、網羅的解析の遂行に当たっては、その高額な費用から、確実なモデルの完成を待つ必要があった。本年度の計画では、その運動期間の設定等が安定しなかったため、次年度初頭までのモデルの確立を待ち、解析に充てることに決定した。そのため次年度使用額が発生した。
|
Research Products
(6 results)
-
-
[Journal Article] TRPC3-Nox2 complex mediates doxorubicin-induced myocardial atrophy.2017
Author(s)
Shimauchi T, Numaga-Tomita T, Ito T, Nishimura A, Matsukane R, Oda S, Hoka S, Ide T, Koitabashi N, Uchida K, Sumimoto H, Mori Y, Nishida M.
-
Journal Title
JCI insight
Volume: 3
Pages: pii: 93358
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-