2017 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of vasculogenic mimicry in high-metastatic Lewis lung carcinoma
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17K15607
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
高辻 英仁 (齋藤) 金沢医科大学, 医学部, 助教 (40768959)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍血管 / 擬似血管 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの増殖に必要な酸素・栄養素を供給する腫瘍血管を作らせなければがんを抑制できるというJudah Folkmanの提唱から、腫瘍血管をターゲットにしたがん抑制戦略が取られVEGFを標的にした血管新生抑制剤が開発されてきたが、当初の期待ほど奏功しているとは言い難い。その理由の1つとして、腫瘍細胞自身が血管様の構造を作りホストの血管網に接続する擬似血管によってVEGFに依存しない細胞増殖を行なっているために、血管新生抑制剤の効果が低いと考えられる。本研究は腫瘍擬似血管を形成する分子メカニズムを解明し、血管新生抑制剤抵抗性の腫瘍に対する新たなアプローチを見出すことを目的としている。 我々はこれまでマウス・ルイス肺がん細胞由来のがん細胞を100回近く繰り返し皮下移植・転移腫瘍形成して2種類の細胞株(低転移性P29細胞、高転移性H11細胞)を樹立した。これらの作る一次腫瘍内に形成される腫瘍血管には大きな違いがあり、低転移性P29腫瘍内には典型的な毛細血管が形成されるのに対し高転移性H11腫瘍には不連続な類洞様構造をもつ血管が形成され、いくつかの血管は腫瘍自身が血管様の管腔構造を作ることを明らかにしている。本年度はまず、同じ細胞由来ながら腫瘍擬似血管を作る高転移性H11細胞と擬似血管を作らない低転移性P29細胞の間にどの様な遺伝子発現の違いがあるのかを明らかにする試みを行った。 (1)低転移性P29細胞、高転移性H11細胞をそれぞれマウス皮下に移植して一次腫瘍を作らせ、免疫組織染色によりそれぞれの腫瘍組織の構造の違いおよびそれぞれの細胞が発現する細胞外マトリックスの種類の違いを明らかにした。 (2)皮下移植により作成した一次腫瘍塊より血管内皮細胞、血管様細胞をFACSにより単離してその血管内皮細胞の遺伝子発現の違いを解析し、類洞を形成する腫瘍で特に強く発現する遺伝子群を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一次腫瘍は増成すると内部の壊死が開始する。一方でルイス肺がん由来の高転移株の類洞様の管腔形成は進行して増成した腫瘍中でのみ形成される。一次腫瘍の組織形成・遺伝子発現を解析するにあたって、腫瘍組織の壊死が起こらず、かつ類洞が形成される適切な時期を決める必要があり、解析する時期の設定に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)VE-cadherin Creマウスとfloxed-stop tdTomatoマウスを掛け合わせることで得られる全身の血管にtdTomato蛍光タンパク質を発現するマウス系赤色血管マウスを移植マウスに用いることで腫瘍血管がホスト由来のものなのか腫瘍自身が血管様構造を作っているのかを確かめ、FACSまたはmicro dissection等で細胞を回収して腫瘍擬似血管細胞に特異的な遺伝子を同定する。 (2)ルイス肺がんで見られる腫瘍擬似血管が他の腫瘍系でも見られるのかをメラノーマ、大腸がん、骨肉腫等でも明らかにし、腫瘍擬似血管を形成するものに共通して発現する遺伝子を明らかにする。 (3)低酸素環境下における、腫瘍擬似血管形成への影響と腫瘍擬似血管形成に関わる遺伝子の発現変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
低酸素状態は、腫瘍細胞の遺伝子発現に大きく影響し、腫瘍細胞の低酸素適応を引き起こすことが知られている。そこで、前年度に実験条件を検討した結果、低酸素環境下における腫瘍擬似血管形成への影響および腫瘍擬似血管形成に関わる遺伝子の発現変化を明らかにすることは、がん細胞の増殖と転移を促進する新たな仕組みを解明する手がかりになると考えられる。 そこで本研究において、低酸素CO2インキュベーターを使用する必要が出たため、今年度の予算と合わせて、前年度の未使用額を低酸素CO2インキュベーターの購入に充てる予定である。購入予定の低酸素CO2インキュベーターは、ウォータージャケット型パーソナルCO2/マルチガスインキュベーター(型番: APM-30D)で、金額は730,000円である。
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