2017 Fiscal Year Research-status Report
癌幹細胞性を賦与するBrd4による三次元ゲノム収束の解明
Project/Area Number |
17K15618
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横山 雄起 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60615714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三次元ゲノム構造 / 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌を用いた先行研究でBETファミリータンパクの一つであるBRD4によって癌幹細胞遺伝子発現に関わる三次元ゲノム構造 (プロモーター、エンハンサーの相互作用) が構築されている可能性が示唆された。平成29年度は、まず数種類の大腸癌細胞株を用いて、卵巣癌同様にBETファミリータンパクによって癌幹細胞遺伝子の発現が制御されているかどうかについて検討した。その結果、大腸癌細胞株においてもBETファミリータンパク阻害剤JQ1投与によって癌幹細胞遺伝子 (LGR5, BMI-1, LRIG1, KLF5) の発現が低下することがわかった。さらに、JQ1投与により大腸癌細胞株の増殖が抑制され、大腸癌においてもBETファミリータンパク阻害剤が癌幹細胞を標的とした治療薬としてのポテンシャルを有することが示唆された。次に私たちは、パブリックデータベースに登録されているエンハンサーマーカー (H3K27ac, H3K4me1) の情報解析の結果から、癌幹細胞遺伝子の一つであるKLF5遺伝子の周辺にエンハンサー領域が存在する可能性が高いことを見いだした。そこで、KLF5遺伝子周辺で構築されている三次元ゲノム構造の解析を行うこととした。三次元ゲノム構造解析には特定のゲノム領域に結合するDNA、RNA、タンパク質を網羅的に同定することができるenChIP (engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation) 法を用いた。KLF5遺伝子のプロモーター領域に結合するゲノム領域を網羅的に解析した結果、いくつかのエンハンサー候補領域を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣癌細胞株を用いた研究を計画していたが、大腸癌細胞株を用いた検討が順調に進捗していること、大腸癌の方が臨床サンプルを得やすい点から、現在は大腸癌での検討に注力している。大腸癌においてもBETファミリータンパク阻害剤JQ1によって癌幹細胞遺伝子の発現が低下することを明らかにできた。三次元ゲノム構造を捉える手法として計画にないenChIP法を用いているが、本法は特定の遺伝子周辺で構築される三次元ゲノム構造を捉える手法として非常に優れているため、今後はこの手法を中心に研究を進めていく。すでに次世代シークエンサーを用いた解析結果も得られており、研究計画は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究成果から、KLF5遺伝子のプロモーター領域に結合するいくつかのゲノム領域 (エンハンサー候補領域) を同定することができた。今後はそれらの領域をCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術により欠失させ、KLF5遺伝子の発現制御に関わるエンハンサー領域を特定する。さらにenChIP法を応用し、KLF5遺伝子のプロモーター領域に結合するRNA (ノンコーディングRNA) やタンパク質を同定し、三次元ゲノム構造を構築する分子メカニズムについて明らかにしていく予定である。さらに大腸癌の臨床サンプルを用いて、培養細胞株を用いた実験で明らかとなった三次元ゲノム構造が実際の患者検体でも生じているのかについても検討を行っていく。また、KLF5遺伝子だけではなく、その他の癌幹細胞遺伝子周辺で構築されている三次元ゲノム構造についても解析を行っていく予定である。
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