2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K15621
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 雄一 九州大学, 生体防御医学研究所, 学術研究員 (00529092)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / 代謝障害 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペルオキシソーム欠損性グリア細胞において神経栄養因子Xの発現異常を見出している。また、ペルオキシソーム欠損症モデルマウス小脳においては神経栄養因子Xの発現異常のみならず、その受容体因子Yの発現異常も認められ、これらが小脳形態異常を導くことも見出している。 今年度は、ペルキシソーム欠損性グリア細胞において発現量が増加している神経栄養因子Xが、何れのペルオキシソーム代謝機能障害が原因であるか検討した。Hexadecylglycerol添加によるプラスマローゲンの回復やペルオキシソームβ酸化酵素Acyl-CoA oxidase 1のノックダウンを行っても、神経栄養因子Xの発現には影響が認められなかった。カタラーゼ阻害剤3-amino-1,2-triazoleの添加により、ペルオキシソーム欠損グリア細胞における神経栄養因子Xの発現量が低下した。ペルオキシソーム欠損性細胞では、カタラーゼは細胞質に局在し還元化状態を導くことが知られていることから、細胞質の還元性が神経栄養因子Xの発現調節に関与することが示唆された。また、遺伝子発現調節機構のより詳細な解析を可能とするルシフェラーゼレポーターアッセイ系を確立した。 ペルオキシソーム欠損症モデルマウスの小脳において神経栄養因子Xのタンパク質発現量増加を見出しているが、mRNAには変化がなかった。小脳に投射する神経細胞においてそのmRNAの発現量が増加していることが明らかとなり、中枢神経系における細胞間の相互作用の異常が病態発症を導く可能性が示唆された。一方、小脳神経細胞の初代培養法を確立し、ペルオキシソーム欠損症モデルマウスにおける受容体因子Yの発現異常解明に向けた実験系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペルオキシソーム欠損グリア細胞における神経栄養因子Xの発現解析を行い、細胞質の還元化が発現量増加に関与することが示唆された。ペルオキシソーム欠損細胞ではカタラーゼは細胞質に局在し、細胞質の還元状態に関与することが報告されている。したがって、細胞質カタラーゼによる還元化が神経栄養因子Xの発現異常を導いていることが示唆された。また、ルシフェラーゼレポーターアッセイ系を確立したことから、さらに詳細な分子機構の全容解明が期待される。 また、ペルオキシソーム欠損症モデルマウスの神経細胞初代培養系を確立した。初代培養細胞を用いることで受容体因子Yの発現異常の分子機構解明が期待される。 以上のように、ペルオキシソーム機能障害と神経栄養因子Xの発現異常との関連性を明らかにしつつあり、病態発症メカニズムの分子基盤の全容解明を目的とした本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
確立したルシフェラーゼレポーターアッセイ系を用いて、神経栄養因子Xの発現調節に関わる領域の同定を試みる。同定された領域の結合する転写因子に関して、クロマチン免疫沈降法により、結合解析を行う。これら転写活性因子による機能調節において、ペルオキシソーム欠損細胞における細胞質還元化の影響を明らかにする。 受容体因子Yの発現異常解明に向けて、何れのペルオキシソーム代謝機能がその発現異常に関わるか明らかにするために、初代培養細胞に対して個別の代謝反応経路に関わる酵素のノックダウンや、ペルオキシソーム欠損マウス由来細胞への正常代謝産物の添加などにより受容体因子Yの発現への影響を検証するとともに、さらに詳細な解析を進める。 上記で明らかにした異常代謝産物が及ぼす転写調節因子への影響を野生型マウスおよびペルオキシソーム欠損性マウスにおいて解析する。代謝産物の脳内への注入やその代謝に関わる酵素等のノックダウン、薬剤による阻害等を行うことで、転写調節因子の分子動態および中枢神経系形成への影響について詳細な解析を行う 神経栄養因子X および受容体因子Y の発現調節に関わる因子の分子動態を野生型マウスおよびペルオキシソーム欠損性マウスにおいて解析する。さらに発現調節に関わる因子に対してノックダウンや薬物阻害等を行うことで、脳形態異常との関連性を検証する。
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