2017 Fiscal Year Research-status Report
チロシンキナーゼ分解を抑制し肺腺癌悪性化を招くSFNを標的とした治療戦略
Project/Area Number |
17K15634
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柴 綾 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50708427)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 肺腺癌 / SFN / USP8 / チロシンキナーゼ / 脱ユビキチン化 / リサイクリング |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFRは肺腺癌の最も有名なoncogeneであるが、その分解経路に着目した研究は限られている。申請者はこれまでに肺腺癌の発生・悪性化因子としてstratifin(SFN)を見出し、肺腺癌特異SFN結合因子の1つとして、EGFRを含む受容体型チロシンキナーゼ(RTKs)の脱ユビキチン化酵素であるUSP8(Ubiquitin Specific Peptidase 8)を同定した。本研究ではSFNによるUSP8を介したRTKsタンパク質の脱ユビキチン化及び分解抑制の分子機序を明らかにし、SFNおよびUSP8の肺腺癌治療標的としての適合性を検証したい。これにより、SFNを標的とした癌細胞のみでRTKsの脱ユビキチン化を抑制する副作用の少ない新規治療薬の開発に繋げ、脱ユビキチン化に着目した全く新しい肺腺癌治療戦略の提唱を目指す。 始めに肺腺癌組織100例を用いてSFNとUSP8の免疫染色を行い、2分子の発現の相関と各々の腫瘍特異性を評価した。その結果、SFNとUSP8の発現は正に相関していたが、USP8は正常肺でも発現か見られ腫瘍特異性はSFNの方が高いということが示された。また、SFNはpathological subtype, pStageや患者予後と相関していたが、USP8はしていなかった。 また、SFNとUSP8を各々in vitroで発現抑制しRTKsの分解進行、抗ユビキチン抗体による免疫沈降や後期エンドソームマーカーとRTKsとの二重蛍光免疫染色法などにより試験した。その結果、 SFNやUSP8を発現抑制するとRTKsのユビキチン化が亢進し分解を受けるエンドソームに蓄積することが明らかとなり、SFNとUPS8が共にRTKsのユビキチン化を抑制することが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた①SFN、USP8発現解析と多数症例を用いた腫瘍特異性の試験、②USP8及びSFNがRKTsに及ぼす影響の解析は順調に進み、すでに終了している。 ①肺腺癌におけるSFN、USP8発現解析では、筑波大学附属病院において外科的に切除された肺腺癌組織100症例のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルを用いてSFNとUSP8の免疫染色を行い、2分子の発現に相関があるか、また、各々の腫瘍特異性を試験した。その結果、SFNとUSP8の発現は正に相関していたが、USP8は正常肺でも発現が確認され腫瘍特異性はSFNの方が高いということが示された。また、SFNはpathological subtype, pStage, リンパ管侵襲、血管浸潤、患者予後と有意に相関したが、USP8は相関がみられなかった。 ②siRNAを用いてUSP8とSFNを発現抑制し、RTKsとその下流因子の発現解析、及びUbiquitination assay、LAMP1とRTKsの二重蛍光免疫染色、CHX添加実験を行った。その結果、SFNとUSP8が共にRTKsのユビキチン化を抑制することが示された。 以上の結果からSFNがUSP8を介してRTKsの脱ユビキチン化を促進していることが示唆され、研究は計画通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、USP8を介したSFNのRTKs脱ユビキチン化作用に両者の特異的結合が必須であることを、SFN結合部位に変異を挿入した変異体USP8や、SFN・USP8共強制発現を利用して検証する。in vivoでは、SFNもしくはUSP8発現を抑制した肺腺癌細胞を用いた移植実験を行い、それぞれの発現抑制による制癌作用を評価し、SFNがUSP8に匹敵する治療標的因子であることを証明する。
|
Causes of Carryover |
前年度予定していた実験が一部次年度に持ち越しとなったため。
|
Research Products
(1 results)