2017 Fiscal Year Research-status Report
エクソソーム含有テロメアRNA定量系による血液中がんバイオマーカー測定法の開発
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17K15656
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
小林 千晶 東京医科大学, 医学部, 助手 (20747828)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テロメア / TERRA / エクソソーム / がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(H29年度)では、新規TERRA定量系の確立を目標とした。各種がん細胞株のCell-free分画のエクソソームから抽出したRNAを材料としてリアルタイムPCRを用いてTERRAの定量を実施し、細胞内でのTERRAの発現を反映しているかどうか、正常細胞における発現とどのように異なるかを検証した。白血病細胞株(U937, HL-60, K562)、悪性リンパ腫細胞株(SUDHL4, Raji)、多発性骨髄腫細胞株(RPMI8226, KMS-11)、肺癌細胞株(SCT-1, RERF-LC-AI)、卵巣癌細胞株(Kuramochi)などの細胞株を用いて解析を進めた。また、対照としては健康人由来の骨髄間質細胞(LONZA社より購入し現在保有しているもの)、EBV transformed B cell lineを用いた。各細胞株の培養上清よりExoQuick(System Biosciences)を用いてエクソソーム分画を分離した。TERRA-PCRではサブテロメア領域をターゲットとしたプライマーを用いて、定量リアルタイムPCRを行った。細胞内TERRAはβ-actinで、エクソソーム内TERRAはスパイクコントロールとして用いたmiR-159aでノーマライズを行った。がんの種類によってTERRAの発現パターンは様々であったが、例えば白血病病由来細胞株では、細胞内TERRAは低発現なのに対し、エクソソーム内TERRAは高発現していた。正常細胞(骨髄間質細胞、EBV transformed B cell line)と比較して、多発性骨髄腫由来細胞株では細胞内TERRAもエクソソーム内TERRAも高発現であり、得られたCt値の結果からも安定した検出が可能であることが示された。 よって、次年度は上記の解析系を用いて、学内の倫理委員会の承認を得てバイオバンク内で保有している多発性骨髄腫患者血清を用いて検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、当研究室では臨床サンプルを含む様々なマテリアルを用いてエクソソームの回収からエクソソーム内のmiRNAを含む核酸の定量解析を行ってきており、その経験とノウハウの蓄積により安定したエクソソーム内TERRAの発現系の構築へと応用することができたと考えられる。また、エクソソーム研究が注目され、エクソソーム抽出キットやエクソソーム内RNAの抽出キットが開発および市販され始めたことも関係していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を遂行する上での課題はエクソソームの量、抽出されたエクソソームの中に含まれるlncRNAの量、TERRAの量とそれを用いたPCRの効率と考えられる。またmiRNAと同様に細胞内のTERRAとエクソソーム内のTERRAの発現量に解離が見られたり、TERRAの機能もがんの種類によって異なる。したがって、株細胞の検討から臨床サンプルを用いた検証への移行に際して、必要に応じてリファレンスの変更など定量系の軌道修正を行う。 初年度に得られた結果から、多発性骨髄腫株(RPMI8226, KMS-11)ではエクソソーム内TERRAの安定した発現が確認できることから、最終年度(平成30年度)はすでに学内の倫理委員会の承認を得てバイオバンク内で保有している多発性骨髄腫患者血清を用いて検証する。さらに、多発性骨髄腫の病型間の差、MGUSとの差、治療反応性などについて検討する。 本研究では、多発性骨髄腫を対象として患者試料での検証を行うが、本法の臨床応用の可能性がある癌種の候補については初年度以降も検討課題とし、固形腫瘍における本法の体液診断としての実用化の可能性についても考察する。また、株細胞での検討が困難である骨髄異形成症候群に関しても臨床サンプルを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究成果について投稿し、投稿に関する費用に充当する予定であったが、年度内(H29年度)に採択されなかったため、差額が生じた。 (使用計画) 投稿中の論文の英文校正、投稿費用に使用する予定である。
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