2017 Fiscal Year Research-status Report
ポリオーマ属ウイルス感染が甲状腺がんの進展に与える影響の研究
Project/Area Number |
17K15662
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山口 高志 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (60626563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 甲状腺がん / 疾患モデルマウス / ポリオーマ属ウイルス / Large T抗原 / KrasG12D |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ポリオーマ属ウイルス感染が、ヒト甲状腺がんの進展をプロモートする可能性について明らかにすることである。同目的を達成するため、1)甲状腺発がん疾患マウスモデルの作製と、2)ヒトの甲状腺がん組織においてポリオーマ属ウイルス感染の広がりを解析検討する計画を遂行中である。 平成29年度においては、交配等に時間を要することから、1)の甲状腺発がん遺伝子改変マウスモデルの作製計画を主に進めた。我々のモデルは、ポリオーマ属ウイルスSV40 tsA58株に由来するT抗原(腫瘍抑制遺伝子のp53やRbを抑制する機能を持つ)をマウス甲状腺組織に発現させて、同ウイルス感染を生じた状況を再現することによる。そこで、甲状腺特異的にCre/loxP遺伝子組換えを誘導することのできるドライバーマウスを米国より新たに輸入して SPF化作業を行ったのちに、T抗原発現遺伝子座保有マウスと交配させて、目的とする複合遺伝子改変マウスを作製した。続いて、T抗原が甲状腺特異的に発現誘導されているかどうかを確認中である。並行して、もう一つの甲状腺発がん要素と推察されるOncogenic Kras(KrasG12D)の発現遺伝子座をシステムに追加する作業を進めている。 2)のヒト甲状腺がん組織標本を対象にした解析においては、千葉大学病院症例の抽出作業を進めると共に、購入して解析する甲状腺がん組織アレイの選定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
甲状腺発がんマウスモデルの作製計画については、その親マウスの生産まで完了していることから、目的のマウス個体の作製作業は順調に推移していると思われる。 また、ヒトの甲状腺がん組織標本を用いたポリオーマ属ウイルス探索作業についても、解析対象となっている組織アレイの選定作業が完了している事から、近日中にT抗原免疫染色が実施可能な状態にあり、順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
構築を進めている遺伝子改変マウスモデルにおいては、i) Cre/loxP遺伝子組換えによる甲状腺特異的なKrasG12D発現システム、そしてii) Cre/loxP遺伝子組換え後にドキシサイクリンを投与することによって甲状腺特異的にT抗原の発現が誘導されてくるシステムが用いられている。当該マウスを作り出すために行ってきたマウス交配は、最終段階へと達しており、親マウスの交配によって出生した仔マウスは、目的の改変遺伝子座を有する予定である。出生したマウスについては、まず甲状腺特異的なKrasG12DとT抗原の発現を確認し、次いで甲状腺がんの発生・病理組織学的解析を実施する予定である。 その後、甲状腺特異的にT抗原のみを発現させたマウスの甲状腺組織、甲状腺特異的にT抗原とKrasG12Dの両方を発現させたマウスに生じてくる甲状腺腫瘍組織よりそれぞれ、不死化甲状腺上皮細胞株、甲状腺腫瘍細胞株を樹立し、両者の遺伝子発現プロファイルの解析へと進みたいと考えている。 並行して、ヒトの甲状腺がん組織を対象にT抗原免疫染色を行うことで、ポリオーマ属ウイルス感染の有無を判定する。その結果をもとに、ポリオーマ属ウイルス感染の有無と、甲状腺癌の発症と進展に関わるメカニズムを検索したいと考えている。さらにはヒトの甲状腺がん組織よりゲノムDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いてポリオーマ属ウイルスDNAの検出を試みたいと考えている。ヒト組織標本を用いる実験を実施するために必要となる大学内における研究倫理審査が完了し次第、当該実験を遂行する予定である。
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