2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K15663
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森永 浩伸 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, プロジェクト助教 (70707942)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 毛包幹細胞 / 環境要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織の機能維持に関する組織幹細胞の役割並びにその破綻を起こす環境要因を知る目的で、毛包幹細胞をモデルとし、その恒常性維持に注目した研究を行っている。毛包幹細胞はその一部を加齢とともに表皮ケラチノサイトへとその運命を転換させ、結果として自己複製や毛母細胞の供給ができなくなり脱毛することがわかっている。29年度ではこれを促進する環境要因の同定を試みた。 まずa)放射線についてはマウスの生存が可能な範囲(10Gy)まで線量を上げても白髪化は起こるものの顕著な脱毛は見られなかった。またb)DMBAなどの変異原性物質についても、良性の色素班などが観察されるものの、顕著な脱毛までは至らなかった。ストレプトゾシンによって作成される、c)高血糖マウスについても顕著な脱毛は見られなかったが、d)高脂肪食による肥満では毛の再生速度の遅延がみられた。e)酸化剤やf)Nrf2欠損マウスによっても顕著な脱毛がみられなかったことから、肥満による毛包幹細胞への影響を調べることとした。 K15crePR:Rosa-LacZマウスで肥満による毛包幹細胞の運命を追跡したところ、有意にその運命を表皮ケラチノサイトへと変換していることがわかり、加齢による毛包幹細胞の機能低下を肥満マウスが早めているのではないかと考えられた。今後はマイクロアレイなどを用いてその内的メカニズムの同定を行い、中心的な役割を担う遺伝子やpathwayをノックアウトもしくは活性化することにより、肥満による毛包幹細胞並びに毛包への影響を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書において29年度は脱毛を促進する環境要因の同定及びその状況下での毛包幹細胞の運命追跡を行う予定であった。これらはすでに達成されており、計画通りに進んでいると言える。また当初は予定になかったいくつかの環境要因についても検討を行い、その影響についても結果が出始めている。さらに30年度以降の予定であった、内的遺伝子の同定についてもすでにマイクロアレイを行い重要と思われるpathwayについて明らかになりつつある。その遺伝子改変マウスにおいても、購入可能なものについては手続きを行った。 本研究は毛包幹細胞に着目した研究であるが、環境要因によっては毛包幹細胞に特に影響が大きいものや、毛包幹細胞には影響が限定的でありながら同じ毛包のバルジ領域に存在する色素幹細胞に大きな影響を与えるものなどがわかってきており、組織の種類とそれに影響を与える環境要因との関係も一部判明してきている。これらは遺伝的バックグラウンドや環境によってなぜ個体間で加齢の速度が違うのか、さらに個体によってなぜ加齢の影響が出る組織が違うのかを解明していく上で重要な手掛かりとなりうる可能性がある。以上のことより本研究課題については当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は脱毛を促進する内的要因についての同定、並びにその影響を調べるための遺伝子改変マウスの作成を行っていく。毛包幹細胞はマウス表皮の中で、Sca-1-,CD34+,ITGA6+の細胞集団としてFACSで単離することが可能であり、その細胞集団をマイクロアレイによって遺伝子発現解析を行っており、その解析とqPCRなどによる確認を行っていく。肥満などによって変化のある遺伝子群は多岐にわたると考えられ、その中で毛包幹細胞の自己複製能力の低下や脱毛に関わる責任遺伝子を同定するため、毛包幹細胞特異的な遺伝子改変マウスを作成していく。毛包幹細胞はその同定以来、ホメオスタシスや分化に関する遺伝子が多数同定されてきており、マイクロアレイデータの解析にはこれら重要な遺伝子を特に重点的に調べていく。また原因となる遺伝子の探索には遺伝子発現以外にもクロマチン状態を網羅的に調べられるATAC-seqによる解析も行っていく。クロマチン状態は遺伝子発現よりも先行して変化することが、特に分化においては報告されており、毛包幹細胞が異常な分化を起こす際の原因となる遺伝子群の探索に有効である。 最終的には薬剤などによって抑制されている遺伝子群を活性化したり、逆に過剰に活性化している遺伝子群を抑制することで肥満による影響を抑制できるかを調べたり、また加齢による毛包幹細胞の運命転換なども抑制し、加齢による脱毛を抑制できるかも調べていく。
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Research Products
(1 results)