2017 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミックアプローチによるオートファジー関連疾患発症機序の解析
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17K15664
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
印東 厚 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (70779058)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロテオーム解析 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは細胞質のオルガネラやタンパク質の新陳代謝を担い、細胞の恒常性を保つ生命にとって不可欠な機構の一つである。オートファジーに不全が起こると細胞内で異常タンパク質や損傷オルガネラの蓄積が起こり、様々なオートファジー関連疾患の発症起因となることが分かっている。しかしオートファジーに関連して細胞外へ放出されるタンパク質の網羅的な解析は行われていなかった。これらの細胞外因子群はオートファジー活性の制御や調節に重要な機能を有していると期待され、またオートファジー関連疾患患者の血液や尿中から検出可能な疾患バイオマーカーとしても有望である。本研究では、マウスのマクロファージ細胞を用いてオートファジー活性化に伴って細胞外へ放出されるタンパク質群をプロテオーム解析によって同定し、それらが制御する分子機構や疾患発症のトリガーとなる機構の解明を目的としている。また、同定される因子群がマウス生体において機能的因子であるか、または血液や尿中に分泌されるオートファジー活性化のバイオマーカーとして応用可能であるかを明らかにする。まず、WT型、及びオートファジー不全マウス由来のマクロファージを調製し、これらを刺激性物質で処理することによって細胞外へ放出される細胞外タンパク質を多数同定した。さらに、オートファジー活性化の有無により細胞外レベルが増減する細胞外因子を特定した。これらのうち、特に変動が大きい因子群を絞り、オートファジー活性化の制御因子、調節因子、または生体レベルでの細胞外バイオマーカーとしての機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね研究計画通りに進捗している。目的としたオートファジー活性化に伴って細胞外へ分泌される因子群を特定するため、WT型、及びAtg7-KO胚性肝臓を調製し、M-CSFによってマクロファージへと分化誘導した。これらをシリカ粒子によってファゴソームの損傷を引き起こすことでオートファジーを誘導できることをIL-1β産生などを指標にして確認した。刺激条件を確定した後、細胞外因子のプロテオーム解析を行い、2000種以上のタンパク質を同定した。比較定量の統計学的確度を上げるため、質量分析を2回実施した。この結果から同定した細胞外因子群のうち、特に興味深いものについて複数の因子に候補を絞った。これらのうち、抗体が入手可能なものについてはウェスタンブロット解析などで細胞外レベルの増減を追試した。また2年目に予定していた当該因子のノックダウンを先行して行い、培養細胞における発現阻害を確認した。また、WT型やオートファジーKOマウス生体において、当該因子が疾患を模した特定条件において尿中への分泌量が大きく変動することを確認し、機能的、または疾患バイオマーカーとしての可能性を示す結果を得た。ノックアウトマウスの作製とともに生体レベルの解析を始めている。以上のことから1年目はほぼ計画通りに研究が進捗している。2年目も計画通り機能解析や分泌機構の解明などに取り組みつつ、進捗が先行した分を当該因子のin vivo/in vitroにおける機能解析についてより詳細に展開させていく。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね研究計画通りに推進していく。しかし、真にオートファジーの活性化で分泌が誘導されるかを示すため、選抜した細胞外因子について以下の点でデータを補強する。 本研究において実行したプロテオーム解析ではオートファジー不全マウスとしてAtg7-KOを用い、刺激性物質としてシリカ粒子で細胞を処理した。同定因子の分泌が真にオートファジーの活性化に依存しているのか、それともAtg7やシリカ粒子刺激に依存しているのかを示す必要がある。このため、その他のオートファジーに必須の因子(Atg16L1など)をKOしたマウス由来の細胞を使用して当該細胞外因子の分泌量変化を確認する。同様に、シリカ粒子以外の刺激性物質でオートファジーを活性化させ、当該細胞外因子の分泌量を確認する。
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Causes of Carryover |
本研究で実施したプロテオーム解析に際して、使用した機器利用費、消耗品等を所属研究所内の質量分析器を使用することで安価に使用することが可能であった。このため、測定実験試薬、質量分析実験試薬の分に余剰が生じた。一方で、2年目に計画していたノックダウン解析などを予定を早めて開始しており、その展開として進めていく遺伝子改変実験やノックアウトマウスの解析にかかる費用に充足させる。
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