2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15669
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
能登 大介 順天堂大学, 医学部, 助教 (10598840)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミクログリア / 中枢神経炎症 / 多発性硬化症 / 実験的自己免疫性脳脊髄炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミクログリアは中枢神経系の免疫担当細胞であり、炎症が根底にある中枢神経疾患において、ミクログリアの機能制御は極めて重要である。申請者は、ミクログリアに特異的な分化制御機構を明らかにするため、DNAマイクロアレイ解析を行い、他の組織常在マクロファージと比較しミクログリアに特異的に発現している遺伝子、EBF3を同定した。EBF3の役割を明らかにするため、多発性硬化症動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対しEBF3-siRNAを投与したところ、症状が増悪したことから中枢神経炎症に関わる因子と考えた。本研究ではミクログリアの分化誘導および機能におけるEBF3の役割を明らかにすることを目的とする。 我々は大脳、および脊髄からミクログリアを単離しEBF3の発現を解析したところ、大脳と比較して脊髄ミクログリアにおいてEBF3が高発現していることが明らかとなった。この結果から、EBF3が中枢神経系の部位により、異なる役割を担っていることが示唆される。ミクログリア機能の部位による異同については、まだ未解明の部分が多く残されており、ミクログリア機能の新たな側面の解明につながる結果と考えられる。当初計画していたコンディショナルノックアウトマウスに問題があることが明らかとなったため、当初の予定とは別のCreリコンビナーゼ導入マウスを入手、新たにEBF3コンディショナルノックアウトマウスを作成している。今後、新たなコンディショナルノックアウトマウスにおいて、EBF3のノックアウトを確認した上で、ミクログリア機能にEBF3が与える影響について、特に脊髄を中心に解析を進める。また、作成したコンディショナルノックアウトマウスに対し、実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(EAE)を誘導し臨床症状並びに病理所見を解析することで、EBF3が中枢神経炎症に与える影響を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、申請者が同定したEBF3のミクログリア分化誘導および機能における役割を解明するため、我々が同定したEBF3遺伝子にloxP配列を導入したEBF3floxマウスと、ミクログリアマーカーの一つであるCX3CR1プロモーター下にタモキシフェン誘導型CreリコンビナーゼCreERT2を導入したCX3CR1-CreERマウスを交配させ、コンディショナルノックアウト作成し、試験管内、および生体内でのミクログリアにおけるEBF3機能の解析を行う予定であった。しかし、EBF3遺伝子にloxP配列がないCX3CR1-CreERマウスにおいても、タモキシフェン投与によりミクログリアの細胞死が誘導されることやノックアウトの効率が不安定であることなどから、同系統での実験の継続は困難と判断し、新たにタモキシフェン誘導型ではないCreリコンビナーゼを導入したCX3CR1-Creマウスを入手した。現在、この系統をEBFfloxマウスと交配させることで、コンディショナルノックアウトマウスを作成しており、今後、EBF3ノックアウトの確認をした上で、解析を行う。また、我々は今回、中枢神経系内での部位ごとのEBF3発現を評価したところ、大脳と比較して脊髄ミクログリアにおいて、EBF3が高発現していることを明らかにした。このことから、EBF3がミクログリアにおいて果たしている役割が、中枢神経内の部位ごとに異なってる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上述した現在作成中のコンディショナルノックアウトマウスを用い、試験管内での一次混合グリア細胞培養内成熟ミクログリアにおけるEBF3ノックアウトの影響の解析、培養上清中の各種サイトカイン、神経栄養因子の解析、生細胞イメージングシステムを用いたタイムラプス画像による形態学的解析などを行い、EBF3のミクログリア分化、機能における役割を解明する。また生体内でのEBF3機能の解析のためコンディショナルノックアウトマウスにおける、フローサイトメーターを用いたミクログリアの表面分子解析、さらに中枢神経系の部位ごとに免疫組織化学法によるミクログリアの数や形態異常の観察、炎症関連分子の発現解析やトランスクリプトーム解析を行う。これらの解析を通してEBF3ノックアウトが大脳や脊髄のミクログリアへ与える影響とその異同について解明する。さらに、EBF3のミクログリア内での遺伝子発現制御につき詳細に解析するため、クロマチン免疫沈降シークエンス(Chip-Seq)法を用いて、ゲノムDNA上でのEBF3結合部位を明らかにし、EBF3を機転とした遺伝子転写制御ネットワークを解析し、ミクログリア分化機構を解明する。また、コンディショナルノックアウトマウスに対し、髄鞘タンパク質由来ペプチドを免疫することで実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(EAE)を誘導し臨床症状並びに病理所見を解析する。免疫組織化学法によりミクログリア、アストロサイトの増殖について解析を行うと共に、炎症関連分子(IL-1βやTNF-α等)の発現解析を行う。また、フローサイトメトリーによる発現分子解析を行い、EBF3が中枢神経炎症に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
前述のごとく、コンディショナルノックアウトマウスに問題があることが明らかとなったため、実験計画の一部に変更が生じた。そのため、動物実験、およびその解析が次年度へ変更となったため、次年度使用額が発生した。今後、新たなコンディショナルノックアウトマウスにおいて、当初計画していた動物実験、および解析を行う予定である。
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