2018 Fiscal Year Research-status Report
トキソプラズマ脳炎におけるアストロサイトの感染防御機構の解明
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17K15680
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
飛彈野 真也 大分大学, 医学部, 助教 (80516386)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トキソプラズマ / アストロサイト / TRAF6 |
Outline of Annual Research Achievements |
トキソプラズマ原虫は、胎児や新生児、免疫抑制状態にあるAIDS患者などに脳症を始めとするトキソプラズマ症を引き起こす細胞内寄生原虫である。近年、グリア細胞であるアストロサイトがトキソプラズマ脳炎を含む脳内感染症の防御機構に関与することがわかってきた。そこで、TNF受容体スーパーファミリーであるCD40やToll like receptor (TLR)シグナルによる刺激により抗トキソプラズマ活性をアストロサイトに誘導することで、完全に虫体を排除することができるのではないかと考えた。本申請では、トキソプラズマ慢性感染時におけるアストロサイトのCD40やTLRシグナルが合流するアダプター分子TRAF6による抗トキソプラズマ活性を検証し、その作用機序を明らかすることを目的とした。 平成29年度では、GFAPcreマウスの生体を得ることに成功した。続いて、平成30年度ではGFAPCreマウスとTRAF6f/fマウスを交配し、実験に使用できる数のGFAPCre TRAF6f/fマウスを得ることができた。平成31年度で、このGFAPCre TRAF6f/fマウスにトキソプラズマ原虫を感染させた時の、虫体に対する感受性について解析を行う。同様に、トキソプラズマ原虫感染時に、虫体を認識する樹状細胞特異的にTRAF6を欠損するCD11cCre TRAF6f/fマウスにトキソプラズマ原虫(ME49株)を感染させ、トキソプラズマ原虫に対する感受性について野生型と比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度に引き続き、平成30年度でGFAPCreマウスとTRAF6f/fマウスを交配しGFAPCre TRAF6f/fマウスを得ることに成功した。現在、GFAPCre TRAF6f/fマウスの交配を進め、実験に必要なマウス数を確保する準備を行なっている。 また、トキソプラズマ原虫(ME49株)を感染させたCD11cCre TRAF6f/fマウスは、感染後7日目の血中ならびに樹状細胞中のIL-12量が低下していた。その一方で、血中ならびにT細胞中のIFN-g量に変化が認められないのに関わらず、感染後10日目に死亡しトキソプラズマに対して高感受性であることが明らかになった。そこで、各組織中のトキソプラズマDNA量をPCR法で調べたところ、CD11cCre TRAF6f/fマウスでは野生型に比べて肺、脾臓で有意に増加し、組織学的な解析で、肝臓ではトキソプラズマによる細胞死が認められた。これらの結果から、樹状細胞のTRAF6シグナルは、トキソプラズマ急性感染期におけるIFN-g非依存的なトキソプラズマの複製のコントロールに関与し、自然免疫制御に重要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
●GFAPCre TRAF6f/fマウスにトキソプラズマ原虫を感染させ、トキソプラズマ脳炎の病態が増悪化するのかどうか解析する。具体的には、脳炎の評価を、①感染マウスの体重変化、②生存率ならびに③トキソプラズマ感染率を指標に解析する。トキソプラズマ感染率は、抗体による染色と原虫DNA量によって評価する。さらに、脳内へ浸潤した免疫細胞の活性化について、IFN-gの発現を指標にフローサイトメトリーで解析し明らかにする。 また、トキソプラズマ原虫感染させたGFAPCre TRAF6f/fマウスが、野生型マウスと同様に長期に生存した場合は、慢性感染時に抗IFN-g抗体を投与し、トキソプラズマ原虫を再活性化させたら、抗体投与後、早期に炎症が強く誘導されるのかどうか検討する。
●抗CD40抗体あるいはTLRリガンドでの刺激による抗トキソプラズマ活性を誘導する新規標的遺伝子の探索をマイクロアレイ解析により解析する。特に、TRAF6依存的な抗トキソプラズマ活性を誘導できる新規候補遺伝子に着目し、その遺伝子を過剰発現させた変異細胞株やCRISPR/Cas9システムで欠損させた変異細胞株の作製を行い、候補遺伝子が CD40、TLRシグナルの抗トキソプラズマ活性に関与するか明らかにする。遺伝子変異細胞株の作製はこれまで報告されているアストロサイト(グリオーマ)細胞株を用いて作製する。CD40、TLRシグナルの抗トキソプラズマ活性に関与する候補遺伝子が得られたら遺伝子変異マウスを作製し、トキソプラズマ脳炎の病態を解析する。当講座では、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子変異マウスの作製が行われており、遺伝子変異マウスを作製する準備は整っている。
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Causes of Carryover |
GFAPCre TRAF6f/fマウスが生まれなかったため、計画通り実験を進めることができなかった。そのため、抗トキソプラズマ活性に関わる遺伝子の探索を、GFAPCre TRAF6f/fマウス新生児由来プライマリーアストロサイトを用いてCD40、TLR刺激による遺伝子の発現変化についてマイクロアレイ解析を行う計画だったが、本年度に行うことができなかったため未使用額が生じた。未使用額は次年度に上記研究を行うための経費に充てることとし たい。
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Research Products
(11 results)