2017 Fiscal Year Research-status Report
志賀毒素に対するB鎖標的型組換えトキソイドワクチンの分子構築
Project/Area Number |
17K15687
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
玉城 志博 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (00720822)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 志賀毒素 / EHEC / トキソイドワクチン / 分子デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではAB5型毒素の一つである志賀毒素(Shiga toxin, Stx)に対するヒト用トキソイドワクチンを構築する。Stxの1型(Stx1)および2型(Stx2)のB鎖(Stx1BおよびStx2B)を連結させることにより、一つのタンパク質性抗原でStx1およびStx2両方の毒素に対応できるトキソイドワクチンを開発する。 連結型ワクチン抗原(Stx1B-Stx2BおよびStx2B-Stx1B)をGb3-ELISAでその性状(生化学的)解析を実施した。まず、1ウェルあたりの添加タンパク質を統一してアプライし、連結部分に挿入してあるHis-tagを用いて検出したところ、Stx1B-Stx2Bの方がより高い吸光度を示し、Stx2B-Stx1Bと比較してGb3に対してより親和性が高いことが示された。次に、この結果を基にGb3に結合するタンパク質量を統一し、抗Stx1または抗Stx2マウス抗血清で検出したところ、両マウス抗血清に対してStx2B-Stx1Bの方がより高い吸光度を示し、その2種のB鎖構造はより天然型のB鎖に近い分子構造を取っていることが示唆された。 また、平成30年度に計画していた「3.StxB鎖連結型トキソイドワクチンの連結順番によるワクチン機能解析」を今年度前倒しで実施した。StxBのN末端側にコイルドコイルタンパク質COMPを融合させたコンストラクト(COMP-Stx1BおよびCOMP-Stx2B)を作製し、これまでと同様に大腸菌で発現させた。これらCOMP融合タンパク質でマウスを免疫後、志賀毒素(Stx1およびStx2)でそれぞれ腹腔内攻撃したところ、COMP-Stx2BではCOMPをC末端に融合させたStx2B-COMPより生存率が低下した。このことから、Stx2Bにタンパク質を融合させる場合、C末端側に融合させる方が安定であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでにStx1B-Stx2BおよびStx2B-Stx1Bでマウスを免疫し、その後、志賀毒素(Stx1およびStx2)で腹腔内攻撃すると、両連結型ワクチン抗原ともワクチン機能が確認されたが、Stx1B-Stx2Bと比較して、Stx2B-Stx1Bの生存率はより高い値を示し、ワクチン機能に差があることが分かっている。そこで平成29年度はStx1B-Stx2BおよびStx2B-Stx1Bの詳細な性状解析(Gb3-ELISA)を実施し、Stx2B-Stx1Bの方が両方のB鎖構造がより天然型のB鎖に近い立体構造を取っていること示した。また、平成30年度に計画していた「3.StxB鎖連結型トキソイドワクチンの連結順番によるワクチン機能解析」を前倒しで実施し、Stx2Bにタンパク質を融合させる際には、N末端側ではなく、C末端側に融合させる方がより安定であることを示した。以上の結果から、Stx2B-Stx1Bの方がStx1B-Stx2Bよりワクチン機能が優れている主な要因が分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はStx1B-Stx2BおよびStx2B-Stx1Bの連結順番によるワクチン機能に差があることを再度確かめ、StxB連結型トキソイドワクチン開発において、抗原産生技術が本質的に異なる可能性を確認する。また、Stx1およびStx2両毒素で同時に攻撃した場合の毒素中和能についても検討する。さらに、これらの連結型ワクチン抗原で誘導した抗血清を用いて、受動免疫方でも両毒素を耐過することが可能か検証し、Vero細胞を用いた中和試験でも抗血清の中和機能を検証する。 それまでに得られた知見に基づき、同じAB5型毒素のコレラ毒素(CT)または易熱性毒素(LT)のB鎖(CTBまたはLTB)と連結し、多重化させたトキソイドワクチンの試作を試みる。その際にも連結する順番を重要な要因として検証する。
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