2019 Fiscal Year Research-status Report
T細胞におけるTRAF5のS-パルミトイル化機序とその生理的意義の解明
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17K15713
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
林 隆也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任講師 (10624851)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | S-パルミトイル化 / Zdhhc分子群 / TRAF5 |
Outline of Annual Research Achievements |
TNF receptor-associated factor 5(TRAF5)がIL-6受容体ヘテロ二量体のgp130に結合する際に必要とするモチーフとしてTRAF5結合モチーフSXXE-X8-EEXXEDを以前報告した。このモチーフをもつ分子としてZdhhc15をデータベース解析にて見出し、免疫沈降法にてZdhhc15-TRAF5の結合が確認され、また、TRAF5がS-パルミトイル化される事も示された。詳細に検討した結果、この結合はTRAF5結合モチーフを介さず、また、TRAF5のアミノ末端側を介することが明らかになった。Zdhhc15はDHHCファミリーパルミトイルアシル転移酵素群(PATs)の一つであるため、TRAF5に対するS-パルミトイル化を担うPATsを検討する目的で、正常マウスT細胞におけるZdhhc分子群のmRNA発現レベルの解析を行い、Zdhhc18を筆頭にZdhhc5,6,7,20の発現レベルが高く、Zdhhc13やZdhhc15はそれ程高くない事が確認された。これらZdhhc分子の発現ベクターを作製し、TRAF5との共発現下におけるS-パルミトイル化レベルの変化を免疫沈降acyl-biotinyl exchange(IP-ABE)法により検討を行った結果、再現性をもってTRAF5のS-パルミトイル化レベルを増減させるものは今回検討した中では認められなかった。 PATsのT細胞における機能を検討するため、正常マウスT細胞においてmRNAが最も高発現している事が確認されたZdhhc18をT細胞ハイブリドーマでノックダウンを行いその影響を検討したが、T細胞抗原受容体に対する特異的抗原ペプチド刺激におけるIL-2産生能に対してZdhhc18発現量の変化は有意な変化を引き起こさなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成31年度(令和元年度)は、マウスを用いる実験およびT細胞を高純度に精製する実験に関しては現在の研究拠点(ガーナ共和国、ガーナ大学野口記念医学研究所ウイルス部)では実験機器や設備、実験試薬の入手経路、実験材料の運搬の可否等といった研究環境およびマウス飼育施設が不完全でかつ実験用マウスの適切な入手が殆ど不可能であるため遂行することが極めて困難であり、帰国時を利用して日本国内で行う予定だった。一方で、申請者の帰国の機会は非常に限られているため、現在の研究拠点の施設に存在する機器で行える実験で、尚且つ国外に運搬可能な実験試薬・実験材料で遂行できる研究計画に関連した一部の実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、マウス実験やT細胞の高純度精製を要する実験に関しては現在の研究拠点では遂行することが極めて困難なため日本国内で行う予定である。TRAF5のS-パルミトイル化レベルと細胞内局在の関連性に関しては、超遠心を用いて分画する手法や共焦点蛍光顕微鏡の利用は現在の研究拠点では出来ないため、各細胞内小器官を適切に分画可能なキットを用いる方法により形質膜分画内外に存在する野生型および各種TRAF5変異体の発現レベルを比較する事でS-パルミトイル化による細胞内局在への影響を評価する方針に変更予定である。また、HEK293T細胞へTRAF5を導入する事により比較的高いレベルでS-パルミトイル化が誘導されるため、Zdhhc分子群によるS-パルミトイル化レベルへの影響を見出し難く、TRAF5に対するS-パルミトイル化を担うPATsの同定を困難にしている可能性が考えられた。TRAF5安定発現細胞株やその単クローン化細胞株を用いた系での検討や、T細胞ハイブリドーマを用いた各種PATsのノックダウンを用いた評価系に変更することでこの問題の解決を図る予定である。
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Causes of Carryover |
研究拠点が国外でかつ空路での最短距離・最短時間での移動においても丸一日近くを要する発展途上国である事により、研究に必要となる試薬等の物品に関して適切な温度管理下での輸送を行う事が実質的に困難な状況である。従って、本邦で購入した試薬等の物品を申請者の日本帰国時の復路における移動時の手荷物として保冷剤やドライアイスを適宜利用しながら輸送せざるを得ない。この方法は申請者の日本帰国の頻度に依存しているため平成31年度(令和元年度)の予算の執行に際して試薬類の購入を控えざるを得ない状況であった。また、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でガーナ共和国への入国が制限され、当該研究の遂行が困難になり令和2年度への延長申請が受理されたが、繰り越された額に関しては上述した理由からその多くの部分を本邦購入試薬類の輸送に際する旅費等に充てる予定である。
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