2017 Fiscal Year Research-status Report
Identification of anti-tumor effects for semaphorin molecules through regulation of macrophage polarization
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17K15722
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
姜 秀辰 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 寄附研究部門助教 (30644398)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | M2マクロファージ / anti-tumor / セマフォリン |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍内微小環境形成において腫瘍随伴マクロファージ(TAM)が重要な役割を果たしている。そこで、TAM活性の分子基盤を解明することでTAMを標的とする治療法の開発が癌根治という新たな治療戦略に繋がることが期待される。本研究では、癌細胞移植マウスモデルを用い、セマフォリン分子をターゲットにする腫瘍組織微小環境形成に対する分子メカニズムを解明し、セマフォリン分子機能障害抗体を用いた抗腫瘍に対する治療効果を検討する。マクロファージは、組織恒常性の維持に重要な役割を荷っている。この機能を実行するには、マクロファージが存在する様々な組織内にある実質細胞の機能状態を監視する能力を持たなければならない。腫瘍は、組織構造や細胞構造など、異常発達した器官の特徴を数多く示す。正常な組織や器官のマクロファージと同様、腫瘍のマクロファージも、いくつかの主要な恒常性機能を果たすことで腫瘍の維持と増殖を可能にしている。しかし、腫瘍とマクロファージ間でのコミュニケーションに関わるシグナルについては、よく分かっていない。本研究では、ヒト腫瘍組織に浸潤してきたTAMにSema6Dが高発現し、Sema6D欠損マクロファージのM2 typeへの分化異常を示す知見を得た。マクロファージのM1/M2 分化制御におけるSema6Dの役割だけではなく、腫瘍内微小環境形成におけるTAMと癌細胞のcell-to-cell contactについてのSema6Dによる制御機構を明らかにすることと、マウス癌細胞移植モデル或いは大腸癌モデルを用いSema6D機能障害抗体の治療効果の検討を行う。そこで本研究では、‘腫瘍内微小環境形成においてSema6Dによる抗腫瘍免疫応答の制御機構の解明と新たな癌治療法の開発’を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度では、骨髄由来マクロファージのM1/M2極性化を制御するSema6Dの生物学作用機構の解明を目標とし、研究計画の通り、研究成果が得られた。i)マクロファージにおけるSema6Dのリガンド分子の同定、ii)マクロファージにおけるSema6Dの細胞内シグナル解析を検討した。i)では、従来ニワトリ胎児の心臓形態形成の過程にSema6Dに対する結合パートナーとして同定されたPlexin-A1欠損マウスの骨髄由来マクロファージを用い、M1/M2 極性化を検討した結果、c-Ablと言うチロシンキナーゼがSema6Dの細胞内領域に結合することが明らかになった。さらにM1/M2分化の過程にリコンビナントSema6D-FcをSema6D欠損マクロファージに加え、マクロファージにおけるSema6Dの逆行性シグナルの関与性を検討した。その結果、外因性Sema6Dを加えてもSema6D欠損マクロファージのM2分化機能異常の減少が回復できなかった。ii)では、Sema6Dの細胞質内領域に結合する分子を同定を行なった。まず、Sema6Dの膜近位部に存在するtyrosine kinaseと結合領域に点突然変異を導入した後、Sema6D欠損マクロファージに導入し、マクロファージの極性化を検討した。その結果、マクロファージにおいてSema6Dは受容体として機能し、細胞内のc-Ablを活性化しM2マクロファージの分化に重要であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.TAMの代謝制御による癌細胞の増殖及び腫瘍微小環境形成機構の解析:EL-4及びB16-F10細胞と野生型及びSema6D欠損マウスの骨髄由来TAMの細胞間相互作用の解析を検討する。 2.Sema6D機能障害抗体及びシグナル分子阻害剤を用いた抗腫瘍免疫に対する治療効果の検討:ヒト癌組織に浸潤してきたマクロファージにSema6Dが高発現するという知見を得ている。この知見から、TAMに発現するSema6Dが癌細胞の増殖を促進し、腫瘍微小環境形成に誘導することが考えられる。そこで野生型マウスにEL-4或いはB16-F10細胞を移植し、ウレタン誘導性肺癌モデルに対して、Sema6D機能障害抗体を腹内に注射することにより、Sema6D機能障害抗体の抗腫瘍治療効果を検討する。具体的には、Sema6D機能障害抗体の投与後に、固形癌の大きさ、浸潤するCD11b, CD206陽性TAM、サイトカインを測定及び癌組織染色法を評価する。また、肺癌及び大腸癌患者の手術摘出標本を用い、M2型マクロファージマーカーのCD163とSema6Dの免疫組織化学を施行し、Sema6Dが病態の重症度を評価する診断マーカーとして可能性を検討する。
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[Journal Article] Semaphorin 6D reverse signaling controls macrophage lipid metabolism and anti-inflammatory polarization2018
Author(s)
Sujin Kang, Yoshimitsu Nakanishi, Yoshiyuki Kioi, Daisuke Okuzaki, Tetsuya Kimura, Hyota Takamatsu, Shohei Koyama, Satoshi Nojima, Masayuki Nishide, Yoshitomo Hayama, Yuhei Kinehara, Yasuhiro Kato, Takeshi Nakatani, Tomomi Shimogori, Junichi Takagi, Toshihiko Toyofuku, Atsushi Kumanogoh
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Journal Title
Nature Immunology
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Int'l Joint Research