2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K15731
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
幸脇 貴久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90780784)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 1型インターフェロン / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫は、ウイルス感染初期の生体防御に必須の働きをし、また、獲得免疫の惹起にも必須である。本研究では、当研究室で同定した新規分子群について、ウイルス感染時の自然免疫応答に果たす役割を明らかにし、ウイルスに対する自然免疫応答の新たな分子機構を解明することを目的とした。 細胞内に侵入したウイルスRNAはRIG-I様受容体(RIG-IとMDA5)に認識される。RNAを認識したRIG-I様受容体はミトコンドリア膜上に存在するIPS-1(MAVS)を活性化する。IPS-1/MAVS分子が下流のシグナル分子を活性化することにより1型インターフェロンが産生される。 本研究では、IPS-1と相互作用する新規分子を酵母two-hybrid法を用いて探索し、Zyxinを同定した。共焦点顕微鏡を用いた近接ライゲーション法によって、IPS-1とZyxinがミトコンドリア上で相互作用していることを確認した。また、Zyxinを過剰発現するとIPS-1を介した1型インターフェロン誘導能が上昇することがわかった。逆にZyxin遺伝子のノックダウンはインターフェロン誘導能を阻害することが分かった。さらに、Zyxin遺伝子のノックダウンによってpoly I:C刺激や合成インフルエンザウイルスRNA刺激による1型インターフェロン誘導が阻害されることを確認した。興味深いことに、Zyxin遺伝子のノックダウンによってRIG-IとIPS-1、MDA5とIPS-1の相互作用が阻害されることがわかった。この成績はZyxin分子がIPS-1とRIG-I様受容体の相互作用の足場となっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は以下の4点を計画していた。1)IPS-1とZyxinの相互作用の確認。2)Ⅰ型インターフェロン産生へのZyxinの関与の検討。3)Zyxinのリン酸化がインターフェロン産生に及ぼす影響の確認。4)ZyxinのKOマウスに対する感染実験。 これまでに、ZyxinがIPS-1と相互作用すること、さらにRLRsとIPS-1の相互作用にはZyxinが必要であることを明らかにした。さらにZyxinはインターフェロン産生を促進する分子であることが分かったが、Zyxinのリン酸化はインターフェロン誘導には影響しないことを示すことができた。KOマウスは入手が困難であったため、試験管内での解析の成果をScientific Reports誌に報告した(Kouwaki et al. Scientific Reports.7:11905. 2017)。 この成果は、当初予定した計画に従って実施し得られたものであり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAをゲノムに持つウイルスとDNAをゲノムに持つウイルスは別々の受容体分子に認識され、下流のアダプター分子が活性化される。それぞれのシグナルは、TBK1(TANK-binding kinase-1)に集約され、TBK1はⅠ型インターフェロンの転写因子を活性化することで、インターフェロンが転写・翻訳される。そこで申請者はTBK1の活性を制御する新規分子を同定するために酵母two-hybrid法による解析を実施したところ、TBK1と結合する新たな分子を単離することに成功した。この分子はウイルスに対する自然免疫応答への関与は報告が無いが、炎症性サイトカイン産生に関与していることが報告されている。今後は、新規分子とTBK1の相互作用がどの様な免疫応答を示すのかを解析していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究費の使用目的は消耗品購入のための物品費であり、平成30年度に計画した実験を全て実施し、研究費を全て使用する。
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