2017 Fiscal Year Research-status Report
IL-4 による NK 細胞を介した自然アレルギー抑制機構の解明
Project/Area Number |
17K15737
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木庭 乾 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 特別研究員 (90793795)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IL-4 / IL-12 / IL-4誘導性NK細胞 / ILC2 / 細胞傷害活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者が見出した、代表的な2型サイトカインであるIL-4により誘導される活性化NK細胞であるIL4-NKの生理的役割の解明を目的としている。これまでの解析から、IL4-NKは過剰な2型免疫応答の抑制機構に関わることが示唆されている。そこで本年度は、IL4-NKによる抑制機構の標的細胞の候補として2型サイトカインの主要な産生細胞として知られるILC2に着目し、主にin vitroの培養実験を用いてIL4-NKとの相互作用について解析を行った。 研究代表者の所属する研究室において過去に行われたRNAシークエンス解析結果から、ILC2はIL-33刺激によって、NK細胞の活性化レセプター2B4のリガンドであるCD48の発現が上昇することが示唆されていた。そこで、単離したnaive ILC2をin vitroで様々なサイトカイン刺激に供し、CD48のタンパク質レベルでの発現量を比較した。すると、IL-2単独刺激に比べてIl-33を加えることでCD48の発現が上昇し、さらにIL-33とIL-4を同時に加えることでより発現量が増加することが明らかになった。しかしながら、IL-4過剰発現マウスから単離したIL4-NKと各種サイトカイン刺激に供したILC2を共培養したところ、単純な共培養ではIL4-NKによって傷害されたILC2は検出できず、IL4-NKの細胞傷害活性の引き金としてCD48の発現上昇だけでは不十分であることが確かめられた。そこで、IL4-NKを予めIL-12で刺激し活性化させた後ILC2と共培養したところ、同刺激に供した定常状態に存在するNK細胞の場合に比べて傷害されるILC2が顕著に増加することが明らかになった。以上の結果から、IL4-NKがIL-12刺激を受け取ることでILC2の機能を抑制し、2型免疫応答の抑制に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroの共培養実験によって、IL4-NKがILC2に対して直接的な抑制効果を発揮することが明らかになったことから、IL4-NKの2型免疫応答抑制機構の標的がILC2である可能性が強く示唆された。この抑制機構の詳細なメカニズムは不明であるため、次年度での詳細な解析が求められる。また、ILC2は様々なサイトカイン刺激に応じてNK細胞活性化レセプターのリガンド発現を上昇させることが明らかになった。このリガンド発現上昇の生理的意義については未解明であるが、IL4-NKは各種NK細胞活性化レセプターを高発現することが明らかになっており、ILC2抑制機構においてILC2側のNK細胞感受性亢進が重要である可能性は十分に考えられる。以上のように、in vitroの解析から、IL4-NKとILC2の相互作用について一定の知見が得られたと考えている。 一方、in vivoの解析については、本年度はいくつかの喘息モデルマウスにおけるIL4-NKの誘導の有無を確かめるに留まった。寄生虫感染のように強力にIL4-NKが誘導されるアレルギー性疾患モデルマウスは見つかっていないため、次年度では喘息モデル以外にも、アトピー性皮膚炎モデルや食物アレルギーモデルなど他のアレルギー性疾患モデルを解析するとともに、1型免疫応答有意なマウスであるC57/B6系統のマウスと、2型免疫応答有意なマウスであるBalb/c系統のマウスとの違いに着目し解析するなどして、IL4-NKが誘導されるのに必要な生理的条件を明らかにしていく。 また、ILC2と並んでIL4-NKの重要な抑制標的であると予想しているTfh細胞については、IL4-NKが出現する寄生虫感染マウスの腸間膜リンパ節や肺縦隔リンパ節において増加することが明らかになった。次年度はIL4-NKとの相互作用をより詳細に解析する。
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Strategy for Future Research Activity |
IL4-NKとILC2の相互作用について、確認されている抑制効果がどういった因子によるものか明らかにするため、まず最も関与する可能性が高いIFNgについてその重要性を確認する。その方法として、IFNg欠損マウスにIL-4を過剰発現させ誘導したIL4-NKをILC2と共培養し、野生型に誘導したIL4-NKと比べてILC2抑制作用に違いがあるか検証する。また、IL-12以外にIL4-NKを活性化させることが明らかになっているIL-21や活性化レセプターを介した刺激を与えた場合にIL4-NKがILC2抑制作用を発揮するか否か検証し、どういった生理的条件下でIL4-NKがILC2を抑制するか明らかにする。さらに、IL-10などの他の抑制因子候補についても、ILC2抑制効果の確認できている共培養系において中和抗体を添加する実験を行い、その重要性を評価する。 In vivoにおけるIL4-NKによるILC2やTfhに対する抑制効果を評価するため、IL4-NKを除去した場合にILC2およびTfhにどういった影響が出るか検証する。寄生虫感染マウスやアレルギー性疾患モデルマウスに対し、抗NK1.1抗体をIL4-NKが出現する時期に投与し、ILC2やTfhの細胞数やサイトカイン産生を定量するとともに、ムチン産生やIgE産生など両細胞による主要な表現型が亢進するかどうか確認する。また、現在取り組んでいる免疫組織染色によるILC2の検出法を確立させ、IL4-NK, ILC2, Tfhそれぞれの位置関係を明確にすることで、in vivoでの相互作用の存在を確認する。 また、これまではNK細胞のみを解析してきたが、次年度はNK細胞と同じく1型ILCに分類されるILC1にも着目し、IL-4による活性化機構の有無、およびその意義やNK細胞との相違点について検証する。
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Research Products
(1 results)