2017 Fiscal Year Research-status Report
造血器腫瘍の薬剤耐性における、小分子RNAによるクロマチン制御の役割の解明
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17K15760
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
東 剣虹 (ケンコウ) 東京医科大学, 医学部, ポストドクター (80724070)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クロマチン制御因子の発現上昇 / アザシチジンによるクロマチン制御因子の発現抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病細胞株(以下「親株」)由来のアザシチジン耐性細胞株(以下「耐性株」)で、クロマチン制御に関与するPIWIL4とMAELについて、タンパク質レベルでの発現上昇が認められた。このことは、本研究の交付申請書の作成時に記載した両遺伝子のmRNAの発現上昇を支持するものである。アザシチジンはエピジェネティクス標的薬として知られていることから、耐性株におけるPIWIL4/MAELの発現上昇は耐性獲得後のクロマチン制御機構に密接に関係することが予想される。言い換えれば、PIWIL4とMAELがアザシチジン不応性のバイオマーカーとなる可能性が一層高まったと考えられる。以下に実績の詳細について記述する。 PIWIL4やMAELの発現がアザシチジンの濃度と関係を解析したところ、親株におけるPIWIL4に関して、mRNAレベルではアザシチジンの有無に関わらず一定の発現が認められたが、タンパク質レベルではアザシチジンの濃度依存的に発現は低下していた。親株におけるMAELに関しては、mRNAでベルではアザシチジンの存在下で著しく発現が誘導されたが、タンパク質レベルでは、全く発現が認められなかった。一方で、耐性株におけるPIWIL4とMAELに関しては、アザシチジンの有無に関わらず一律に高い発現が認められた。 以上の結果から、親株ではクロマチン制御因子であるPIWIL4とMAELはアザシチジンに対して応答性を有することが明らかとなった。それにより、アザシチジンの投与で本来タンパク質レベルで抑制されるPIWIL4とMAELが、耐性株では恒常的に高発現並びにアザシチジンに対する応答性の消失が、薬剤耐性機序或いは薬剤存在下における腫瘍細胞の生存に寄与しているのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PIWIL4、MAELタンパク質の検出に用いる抗体の選別や条件検討で予定よりも時間がかかった。PIWIL4とMAELがタンパク質レベルエルで発現していることを確かめるのは本研究を遂行する上で重要なポイントであるため遂行した。結果的にPIWIL4とMAELの双方ともに耐性株v.s.親株で著しいタンパク質の発現上昇が認められた上、親株ではアザシチジンに対して応答していることが確認できたため予想よりも大きい収穫となった。 PIWIL4やMAELのノックダウンについては、血球細胞を対象としているため、もっとも効率が良いとされるウイルスベクターを用いた系で各々の因子のノックダウン細胞株を作成中である。ウイルスベクターの納期が予定より大きく遅れたため、こちらもやや遅れての進行となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本来PIWIL4と共に働くpiRNAに着目した研究を進める予定であったが、PIWIL4とMAELの親株におけるアザシチジンへの応答性と耐性株における恒常的高発現の結果を踏まえ、アザシチジン抵抗性におけるPIWIL4とMAELの働きに着目して今後進めていく予定である。具体的にはレトロトランスポゾン活性の制御に着目している。アザシチジンの作用機序の一つとして、レトロトランスポゾンの活性化が報告されており、同様にPIWIL4とMAELが欠損することでレトロトランスポゾンが活性化することが報告されている。レトロトランスポゾンはDNAダメージを引き起こし、細胞死を誘導する点から、耐性細胞ではPIWIL4とMAELを恒常的に高発現させることで、両因子のクロマチン制御機構の一環としてレトロトランスポゾンを常時抑制しているのではないかという仮説のもと、耐性株におけるレトロトランスポゾン遺伝子の発現解析や制御機序の解明を重点的に進める。それと並行してpiRNAの網羅的発現解析やプロファイリングを行う予定である。
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Causes of Carryover |
PIWIL4とMAELのタンパク質の検出やノックダウン細胞株の作成で時間が予定よりも要したことにより、一部の実験(高発現株の作成)を止めたことと、今後piRNAのRNAseqの予定をしており、次世代シーケンスに必要な試薬などの消耗品が高額なため、次年度使用額を充てることに決めた。
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Research Products
(1 results)