2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎疾患バイオマーカーとしてのカルジオリピンの有効性の検証
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17K15766
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 貴之 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (30754642)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カルジオリピン / 化学合成 / 質量分析 / 定量分析 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はカルジオリピンが慢性腎臓病における新たなバイオマーカーになりうるか検証することを目標としている。大きく3つのフェーズがあり、①標品の合成、②定量系の確立、③臨床検体の分析 からなる。昨年度中に行った内容は、①と②にあたる部分であり、具体的には1)合成経路の確立、2)新規合成経路の探索、3)定量測定系の確立に向けた検討 の3つである。それぞれについて簡単に述べる。 1)合成経路の確立に関しては、申請時に計画していた合成経路が汎用的であることを異なる脂肪酸を有する化合物を合成することで確認することができた。現在までに奇数鎖脂肪酸のC15、不飽和脂肪酸のオレイン酸、リノール酸の計3種類の合成に成功している。合成経路で難易度が高い点は、ホスホジエステル結合を構築する骨格形成反応と脱保護である。 2)新規合成経路の探索に関しては、1)の問題点として挙げた骨格形成反応を簡略化することを主眼としたものである。すなわち、脂肪酸の種類を変える度に骨格形成反応を行う必要がない経路の開発を目指す。保護グリセロールとの骨格形成反応は低収率ながら目的物が得られており、今後の検討によって実践的なものへ改善することができることが見込まれる。今後は基質の保護基を検討する必要があると考えている。 3)の定量測定系に関しては、標品を用いて系の確立に向けた実験を進めている。検量線は良好な直線性を示すことを確認しており、今後は系のバリデーションのため添加回収試験が必要と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)合成経路の確立に関しては、申請時に計画していた合成経路が汎用的であることを異なる脂肪酸を有する化合物を合成することで確認することができた。現在までに奇数鎖脂肪酸のC15、不飽和脂肪酸のオレイン酸、リノール酸の計3種類の合成に成功している。合成経路で難易度が高い点は、ホスホジエステル結合を構築する骨格形成反応と脱保護である。昨年度中にて、①骨格構築反応ではN-PhenylImidazoliumTriflateが触媒として最適であること ②脱保護条件として、90%トリフルオロ酢酸が最適であることを見出した。特に、不飽和脂肪酸を有するカルジオリピンの場合は酸に不安定であり、この条件以外では目的物を得ることが困難であった。 2)新規合成経路の探索:保護グリセロールとの骨格形成反応は低収率ながら目的物が得られており、今後の検討によって実践的なものへ改善することができることが見込まれる。ジフェニルケタール保護グリセロールを基質として用いた場合には、目的物が得られなかったが、1,2-ベンジリデン保護グリセロールの場合はわずかであるが目的物が得られた。この結果よりこの反応は立体障害に敏感であることが予想されるため、イソプロピリデンなどより小さな保護基が適しているのではないかと考えている。 3)の定量測定系に関しては、標品を用いて系の確立に向けた実験を進めている。検量線は良好な直線性を示すことを確認しており、簡易的にヒト血清中および培養細胞中のカルジオリピン量を測定した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に進める点は、定量系のバリデーションを取ることである。現在1種の内部標準物質と2種の標準物質を調製できているため、それらを用いて分析系の再現性を確認する。 それと共に、新規合成経路の探索も行う。昨年度中にきっかけとなる結果が得られたため、それを元に改善を行う予定である。 今年度から始めなければならない点としては、病院と具体的な研究プランを共有することである。どのような検体で、どの程度の数を対象とするかなどを詰める必要がある。それを元に次年度の研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に使用があり今年度に含まれなかったこと、学会に学生を同伴する予定であったが該当する学生がいなかったこと、申請者の異動があり研究費の返還が途中で決まったこと、があげられる。
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