2018 Fiscal Year Research-status Report
転移性腫瘍におけるトリプトファン代謝酵素制御による新規免疫療法の確立と病態解析
Project/Area Number |
17K15785
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
星 雅人 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (40633996)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トリプトファン代謝 / IDO1 / IDO2 / KMO / KAT / キヌレニン / B16F10細胞 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.B16F10腫瘍細胞をマウスに尾静脈投与し、肺転移モデルを作製した。前実験の結果より、IDO1KOマウスおよびIDO1阻害剤投与マウスでは、野生型マウスと比較して有意に肺/体重比が減少することを明らかにした。一方で、IDO2KOマウスおよび阻害剤の投与において抗腫瘍効果はみとめなかった。従って、B16F10細胞投与による肺微小環境ではIDO2を介さないトリプトファン代謝が重要であることが明らかになった。
2.前年度にキヌレニンを3-ヒドロキシキヌレニンに代謝する律速酵素であるKMOKOマウスにB16F10腫瘍細胞を尾静脈投与し、肺転移モデルを作製したところ、野生型マウスと比較して有意に肺/体重比が減少していることを明らかにした。そこで、KMOKOマウスと野生型マウスの肺臓中トリプトファン代謝産物を測定したところ、。KMOKOマウスでは、野生型マウスと比較して、有意にキヌレニン、キヌレン酸およびアントラニール酸が増加していた。一方で、3-ヒドロキシキヌレニン、3-ヒドロキシアントラニール酸が有意に減少していた。すなわち、高キヌレニン血症のマウスであっても、抗腫瘍効果を失うことはなかった。従来、キヌレニンは細胞障害性T細胞の抑制や制御性T細胞の誘導を介した腫瘍免疫を制御していると考えられていたが、本研究において、少なくともがん微小環境のキヌレニンレベルの増加は腫瘍免疫の制御に関与しないと考えられた。
3.ヒト肺癌病理標本におけるトリプトファン代謝関連酵素の発現検討を進めている。特に肺腺癌の検体を中心に、IDO1、IDO2、KMO、KAT等の免疫染色の最適化を実施した。今後は予後や治療効果との関連性を調査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画として、1)各種KOマウスにおけるトリプトファン代謝産物の有無によるNKT細胞及びCTL誘導効率の比較、2)トリプトファン代謝産物による腫瘍細胞増殖シグナル経路の制御機構の解析、3)副作用が少なく特異性の高い阻害剤の選択及び投与量、投与法の検討を予定していた。しかし、研究遂行に伴った新たな制御機構を同定したため、そちらの研究を優先し、おおむね順調に実験が進展している。今後、上述した1)~3)の研究についても進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に続き、1)各種KOマウスにおけるトリプトファン代謝産物の有無によるNKT細胞及びCTL誘導効率の比較、2)トリプトファン代謝産物による腫瘍細胞増殖シグナル経路の制御機構の解析、3)副作用が少なく特異性の高い阻害剤の選択及び投与量、投与法の検討を実施する。上記課題を円滑に実施し、学術的価値の高い雑誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)mRNA-seqの外部委託費が、想定していたよりも安価であったため次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度に生じた未使用額は、今年度の物品費として有効に使用したいと考えている。
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Research Products
(4 results)