Outline of Annual Research Achievements |
【最終年度に実施した研究の成果】 最終年度は, 炎症性腸疾患(IBD)の病態把握に有用なバイオマーカーの探索を目的とした実験を行った。結果, IBD患者の血清中では, 健常人と比較して, 補体C3が上昇し, α2-マクログロブリンが減少することが確認された。また, これら血清中因子は潰瘍性大腸炎(UC)の重症度(DAIスコア)と有意に相関していることが分かった。以上の成果は, "Serum complement C3 and α2-macroglobulin are potentially useful biomarkers for inflammatory bowel disease patients"のタイトルで, 国際学術雑誌Heliyonに掲載された(Okada K et al., Heliyon 7(3):e06554, 2021)。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】 本研究は当初, S100A9を全身に高発現するトランスジェニックラット(Tg-S100A9)を作製し,S100A9の免疫学的機能とUC発症との因果関係を明らかにすることを目的としていた。しかし, Tg-S100A9の樹立に難航したため, IBDにて生体内で特異的な変動を示す因子, 即ちバイオマーカーの発掘を主軸とした研究に移行した。結果, S100A8/A9, 補体C3, α2-マクログロブリンといった, これまでIBDの血清中で注目されていなかった因子に関する報告を国際学術雑誌に3編, 掲載することが出来た。これら成果はIBDに対する新たなエビデンスを提供しており, 臨床検査および診療に対して有益な成果と思われる。今後は発掘したバイオマーカーの臨床応用を目指し, 産官学連携研究に移行することを視野に入れている。
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