2017 Fiscal Year Research-status Report
神経因性疼痛の環境療法開発への試み:非侵襲的PETによる環境治療効果長期追跡
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17K15794
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
下地 佐恵香 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 研究員 (50791563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経因性疼痛 / PET / 環境エンリッチメント / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経因性疼痛バイオマーカーとしての脊髄ミクログリア活性化の有効性に着目し、18kD Translocater Protein 標的プローブを用いた活性化ミクログリアPET イメージングによる客観的疼痛評価法を確立し、この手法の非侵襲的な特性を最大限活用することにより神経因性疼痛に対する環境エンリッチメントの疼痛治療効果を同一個体を用いて長期にわたって評価することにある。環境エンリッチメントの神経因性疼痛治療法としての有効性を明確化できれば、運動療法・行動療法・リハビリテーションといった薬剤に頼らない神経因性疼痛治療法の開発に貢献すると期待される。また、本研究において非侵襲的“痛み”イメージング法としての有効性を確立できれば、PET本来のトランスレーショナル研究に適した性質から、そのまま臨床画像診断法として利用し得る。 平成29年度は主に、疼痛モデルを用いた侵襲性の高い動物実験を遂行する為の倫理申請手続きと、神経因性疼痛モデルを用いたPETイメージング評価において実績のある研究施設において、疼痛モデルの作製法、動物に適用する環境エンリッチメントの検討に加え、より感度の高い脊髄における疼痛のイメージングプローブを検討する為の情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画当初は国立循環器病センター研究所で本研究を推進する予定であったが、研究代表者の職場変更により使用できる実験施設が変わり、新しい施設での動物実験倫理申請など実験を遂行する際の手続きに時間を要した為、進捗状況は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、モデル動物の作製とTSPO PETイメージング法の確立から、このPET手法を用いた環境エンリッチメントの効果の評価まで行う。 まず、坐骨神経部分損傷(partial sciatic nerve ligation;PSL)モデルを作製し、触刺激に対する痛み行動(アロディニア)の評価としてvon Frey フィラメント試験を行い、両肢の反応閾値が手術前より低下した個体をアロディニア発現個体として実験に使用する。脊髄内ミクログリアの活性化の評価として、PSL 処置群とsham 群に対し、術前および術後一週間ごとにTSPO PETを施行し、脊髄へのRI 集積と疼痛行動評価との関連を調べる。免疫組織化学染色を行い、RI 集積分布とタンパク発現分布との関連を評価し、疼痛のイメージングバイオマーカーとしての有効性を明らかにする。 平成30年度後半には、確立した神経因性疼痛モデルラットとPETによる疼痛評価法を用いて、長期環境エンリッチメントの疼痛緩和効果の推移を調べる。ラットを4 群(エンリッチメント・PSL モデル群/エンリッチメント・sham 群/非エンリッチメント・PSL モデル群/非エンリッチメント・sham 群)に群分けし、1 か月間にわたり各群の同一個体について、経時的に疼痛行動評価とPET撮像を実施する。疼痛行動評価、TSPO PET、免疫組織化学染色の結果を統合解析し、長期的なエンリッチメントの疼痛緩和効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施予定であった神経因性疼痛モデル動物の確立とPET評価を次年度に繰り越す為、実験動物・麻酔・化学薬品等に翌年度分として使用する計画である。
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