2018 Fiscal Year Research-status Report
神経因性疼痛の環境療法開発への試み:非侵襲的PETによる環境治療効果長期追跡
Project/Area Number |
17K15794
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
下地 佐恵香 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 研究員 (50791563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経因性疼痛 / 活性型ミクログリア / [18F]F-DPA PET / TSPO / 環境エンリッチメント |
Outline of Annual Research Achievements |
神経因性疼痛の病態指標として、活性型ミクログリアにおける18kDa translocator protein(TSPO)をターゲットにした 新しいリガンドである[18F]F-DPA を用いたPETイメージングを試み、上記病態の治療効果の客観的指標としての有効性を確認するパイロットスタディを行った。Seltzerらの方法により、ラット大腿上部の坐骨神経の1/2~1/3を結紮する坐骨神経部分損傷(partial sciatic nerve ligation; PSL)モデルを作製し、触刺激に対する痛み行動(アロディニア)に基づく評価法の最適化がなされた。作成したモデル動物のうち4匹に対して術前、術後1週間、2週間後にPET撮像を行い、疼痛行動試験とPET撮像の観察がなされた。手術後のラットでは手術前と比較して有意な疼痛行動が見られ、一方 [18F]F-DPA PET画像においても手術前と比較して、ターゲットとなる腰部脊髄における[18F]F-DPAの集積の上昇が目視的に観察された。本イメージングリガンドは、肺野や骨への集積も認められ、他のTSPOリガンドとは異なる体内動態を有することも示唆された。これらの情報を総合的に捉えて真に有効な疼痛の病態評価法としての有用性、また種々の治療効果の評価指標としての意義を引き続き検討する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル動物の侵襲性が極めて高いことから、プロトコルの最適化などのために倫理委員会の承認までに時間を要した。当初はマウスで計画していたが、PET解像度の限界を配慮してラットで実施する方針に変更したがその決定に至るまでにも時間を要した。最終的には、空間解像度が0.4mmの前兆12cmの広い範囲をカバーする最新のPET装置の利用が可能になり、予定以上の高画質・高精度の画像が得られることになった。当該年度では疼痛モデル動物が準備でき、行動評価系も確立され、さらに4匹で結紮前から2週間後まで3回の経過観察PET撮像を行い、遅れを取り戻すことができたと考えられる。ただし、新規トレーサの特性は優れているものの、骨髄周囲の背骨領域への集積が若干あり、また肺野への集積が他のTSPOリガンドよりも高いことが明らかになった。この特性がどのような影響を与えるかは精査が必要であると考えられた。また、どのように定量指標を見出すか新しい数理モデルの検討も計画されるに至った。さらに、当初計画したP2X4阻害剤に基づく効果についても、最新の状況を精査した上で再検討を行う必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、パイロットスタディで得られたPET画像の定量的解析を進めるとともに、病理学的解析との比較検討により、痛みの客観的指標としての[18F]F-DPA PETの有効性を確立する。さらに、確立された神経因性疼痛モデルラットと[18F]F-DPA PETによる疼痛評価法を用いて、長期環境エンリッチメントの疼痛緩和効果の推移を調べる。ラットを4群(エンリッチメント・疼痛モデル群/エンリッチメント・コントロール群/非エンリッチメント・疼痛モデル群/非エンリッチメント・コントロール群)に群分けし、1か月間にわたり各群の同一個体について、経時的に疼痛行動評価とPET撮像を実施する。疼痛行動評価、[18F]F-DPA PET 、病理学的評価の結果を統合解析し、長期的なエンリッチメントの疼痛緩和効果を明らかにする。
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